雑誌『キング』p.112中段 幻兵団の全貌 引出しから拳銃!

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.112 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.112 中段

とのできないこの密室で、私は二人の秘密警察員と相対しているのである。

——何が起ころうとしているのだ⁈

呼び出されるごとに立ち会いの男が変わっている。ある事柄を一貫して知り得るのは、限られた人々だけで、他の者は一部しか知り得ない組織になっているらしい。

——何と徹底した秘密保持だろう!

鍵をしめた少佐は静かに大股で歩いて再び自席についた。それからおもむろに机の引出しをあけて何かを取りだした。ジッと少佐の眼に視線を合わせていた私は、『ゴトリ』という鈍い音をきいて、机の上に眼をうつした。

——拳銃!

ブローニング型の銃口が、私に向けておかれたまま冷たく光っている。つばきをのみこもうと思ったが、口はカラカラに乾ききっていた。

少佐は半ば上目使いに私をみつめながら、低いおごそかな声音のロシア語で口を開いた。一語一語、ゆっくりと区切りながらしゃべりおわると、少尉が通訳した。

『貴下はソヴエト社会主義共和国連邦のために、役立ちたいと、願いますか』

歯切れのよい日本語だが、私をにらむようにみつめている二人の表情と声とは、『ハイ』という以外の返事は要求していなかった。短く区