と県庁所在地をはじめ数市しかない。まず、それらの各支局にロ、ハ、ニ、ヘ、トの五条件該当者の調査を依頼した。しかし目的を明かさなかったためか、似かよった報告は数件きたが、どうも思わしくない。職業と居住地に対するカンから、私は小都市の○○市と判断して、出張してみた。居た! すべての条件に該当するG氏を、ついに発見した。
G氏の身辺調査をはじめる。彼は自宅に遊びにきた知人に、『私はこの間、✕✕✕に用事があって、商用もかねて日帰りで上京してきました』と、話のついでに自ら語ったことが判明、商大卒の学歴、政党、思想的関係は表面上なし、父親との折り合い悪し、など分かる。
私はついに直接ぶつかる決心をする。
『Gさんにお眼にかかりたいのですが』
小さな事務室では、二人の男が現金の計算をしており、女の子の給仕が一人いた。私は正面のG氏とおぼしき男に向かって口を切った。
『どちらさんでしょうか?』
その男は、自分はGである、と名乗る前に、アリアリと警戒の色を浮かべて、そう反問してきた。この男こそG氏だ、と直感して、私は注意深く相手の表情や態度を見守りながら続ける。
『東京から参った者ですが』
『どなたの御紹介でしょうか?』