黒幕・政商たち p.052-053 ワン・フロアー・カンパニー

黒幕・政商たち p.052-053 タバコにおける因縁と歴史と実績と情実とにより、かつ、専売公社幹部OBを役員に加えていることで、完全に「利権化」していることが明らかである。
黒幕・政商たち p.052-053 タバコにおける因縁と歴史と実績と情実とにより、かつ、専売公社幹部OBを役員に加えていることで、完全に「利権化」していることが明らかである。

明治三十一年に、葉たばこ専売法、同三十七年に、たばこ専売法が実施になって、生産から

販売まで専売制になった。大蔵省専売局が、日本専売公社になったのは、昭和二十四年であった。

どうして、こんな年代記にふれたかというと、民営たばこが専売に切りかえられた、〝家庭の事情〟が、一世紀になんなんとする今日まで、尾を引いているからである。

公社幹部OBの会

大蔵省統計(通関実績)によると、昭和二十五年に、僅か三十万キロだけが輸入された米葉は翌二十六年の一九九万キロから、次第に量を増し、三十年に五九二万キロ、三十一、二、三年は減って、三十四年に五五〇万キロにもどり、以後は増加の一途をたどり、三十九年度は、一五〇六万キロにも上っている。

この米葉に比し、他の諸国はホンの一握り、多くて一〇〇万キロ前後、ほとんどが十万キロ単位の葉たばこ輸入量である。そして、これらの小量輸入国の、輸入業務はいわば自由竸争であるが(エキストラという)、米葉はレギュラー買付けで、商社は十五社に限られている。

この十五社で、日本米葉協会なるものが組織され、会長に石田吉男前公社副総裁が就任しているが、三井物産、三菱商事、大倉商事、三洋貿易の他は、専業十社といわれる米葉輸入だけを業とする、ワン・フロアー・カンパニーである。

三十九年度のアメリカからのタバコ輸入量は、葉たばこの百億四千万円を含んで、総計百二十一億一千三百六万二千円であるが、これを十五社で分配しており、他の如何なる大商社も小商社も割りこめないという訳である。

この専業十社は、またさらに七葉会という団体があり(このうち一社は、業界筋の話によれば、何かマズイことがあって、専売公社に登録を取消され、米葉協会にも加っていない、という。従って、七葉会の六社と他に四社になる)、これらは、昔の民営時代からの、タバコにおける因縁と歴史と実績と情実とにより、かつ、専売公社幹部OBを役員に加えていることで、完全に「利権化」していることが明らかである。

なお、公社幹部OB会である、清交会名簿の職業欄をみると、石田米葉協会長の三洋貿易と三井物産一名を除き、専業十社の社名が記載されている者は、七社九名にも及んでいる。登記謄本を調べれば、その数はもっと増すであろう。また同名簿によると、六名の国会議員がおり、例の小林章議員の職業欄は、皮肉にも空欄になっているので、これを加えると七名になる。

何故、この十五社しか、米葉の輸入を扱えないのであろうか。公社外国部の外国課友成課長補佐は、「公社は製造たばこの品質、味を一定にするため、アメリカのディーラーを指名しており、この十五社は、アメリカのディーラーの代理店であるからだ」と、説明する。

米葉協会加盟十五社以外は米葉輸入ができないということは、十分に独禁法違反の疑いがあ

るのだが、それを米ディーラーの代理店という形でカバーしており、専業十社のうちでも、それを肯定している社もある。