黒幕・政商たち p.074-075 何十億の金が右から左へと動く

黒幕・政商たち p.074-075 日本住宅公団大阪支所のやった、光明池問題なるもの、この〝元兇〟ともいうべき立場の人物は、今は故人となった河野一郎だというのが、関係者の通説である。
黒幕・政商たち p.074-075 日本住宅公団大阪支所のやった、光明池問題なるもの、この〝元兇〟ともいうべき立場の人物は、今は故人となった河野一郎だというのが、関係者の通説である。

左翼の国会議員も登場

ここで、読者の理解を助けるため、日本住宅公団大阪支所のやった、光明池問題なるものを解説しなければならない。この〝元兇〟ともいうべき立場の人物は、今は故人となった河野一郎だというのが、関係者の通説である。そして、筆者がこの事件を、改めて取上げる所以も、河野一郎なる公人の、政治家としての功罪を、評価すべき資料たらしめたいと、願うからでもある。

光明池問題が表面化したのは、三十九年四月二十一日の衆院決算委で、勝沢芳雄委員(社、静岡一区)が、「公団の宅地買収に不明朗な点がある」と、質したのにはじまる。その質問によると、「公団が三十八年五月十七日に、同地区を坪当り四千百円で買ったが、この土地は三十六年ごろには、坪当り千円にすぎなかった。また、公団は三十七年に団地化計画を立てて、大阪支所に調査命令を出したが、三十八年四月上旬、同支所は条件が悪いとして、計画反対の報告を出した。しかし、四月末になって、再調査命令が出され、同支所は、五月七日に土地等評価審議会を開いて、土地買収の申請をすることを決め、その後十日間のうちに、契約が成立して、買収費の十四億七千万円のうち、九〇%が一会社に支払われた」という。

そしてさらに、前述の「監査報告書」が訂正されて、不明朗な点に注意喚起した部分が、削

除されている、とまで指摘して、〝黒い霧〟ムードを糾騨した。

これに対し、挾間総裁は「四千百円は適正だ」と、型通りの〝国会答弁〟をして逃げ、大庭監事は「大阪支所の報告の内容に、事実誤認があったので訂正」とのべた。

だが、監査報告書は訂正版には、報告の・印部分「おって……公団の性格を如実に表わしたものである」の十三行が削除されているし、大庭監事の署名印は双方にあるのである。

勝沢委員の質問は、こうして、いうならばカルクイナされてしまったのであるが、問題は深く静かに潜行していたのであった。そして、被害者に選ばれたのが日本三棉の雄といわれた、東洋棉花不動産部。主役は、東棉嘱託の肩書をもつ、東洋殖産社長岡林和生(三九)と、興亜建設社長大橋富重(四二)の両名。最後には顔見世ながら、右翼の巨頭(?)といわれる児玉誉士夫氏から、日共を追われた「日本のこえ」志賀義雄氏まで登場するといった、豪華キャストである。何十億の金が、右から左へと動くのも、無理からぬことでもあろう。そして、事件は、勝沢委員の質問から、丸一年を経た四十年春すぎから、東京、大阪で軌を一にして起ってきた。

まず、大阪篇から述べよう。

大阪府警捜査四課に、四十年八月十三日、大阪で二人の雑誌発行人が捕まったのである。「パーチャス・ガイド・オブジャパン」という、英文の貿易案内誌といっても、ベヤリングを

主とした機械の業界誌であるが、この二人の同社重役は、光明池地区の宅地買収にからんで、東洋殖産岡林社長から一千万円、東棉不動産部豊田保部長から二千七百万円、合計三千七百万円をおどし取った、という容疑であった。