黒幕・政商たち p.076-077 広布産業事件のカラクリ

黒幕・政商たち p.076-077 志賀義雄が質問。「佐々木環(広布産業社長)が、大阪の東洋殖産岡林社長と、パーチャス社今西啓師社長、東棉豊田不動産部長、同青木課長の四人を告訴した事件。ある官庁、某高官が関係している」
黒幕・政商たち p.076-077 志賀義雄が質問。「佐々木環(広布産業社長)が、大阪の東洋殖産岡林社長と、パーチャス社今西啓師社長、東棉豊田不動産部長、同青木課長の四人を告訴した事件。ある官庁、某高官が関係している」

まず、大阪篇から述べよう。

大阪府警捜査四課に、四十年八月十三日、大阪で二人の雑誌発行人が捕まったのである。「パーチャス・ガイド・オブジャパン」という、英文の貿易案内誌といっても、ベヤリングを

主とした機械の業界誌であるが、この二人の同社重役は、光明池地区の宅地買収にからんで、東洋殖産岡林社長から一千万円、東棉不動産部豊田保部長から二千七百万円、合計三千七百万円をおどし取った、という容疑であった。

ところが、この恐かつ事件から、英文誌の重役の一人、柴山英二(四三)が、公団大阪支所用地課長勝又国善(四〇)に、贈賄した旨を自供したため、同十月二十七日、公団東京本所労務課長に転勤していた勝又が府警捜査二課に逮捕されるにいたった。

さらに府警二課は、翌十一月二十二日、勝又の自供から、当時の東棉不動産部長で、事件の責任から東京支社化学品石油本部長に転じていた豊田保取締役(五一)を任意で調べ、岡林は胃の手術のため入院してしまうという進展を見せた。

一方、東京では、別の角度から、事件になっていたのである。

吹原事件が森脇将光逮捕という、ドンデン返しを見せていた最中の、五月十一日、衆院法務委で志賀義雄氏が、「四十年一月十五日付で、佐々木護氏から東京地検あてに上申書が出ている。それによると、護氏の兄の環氏(広布産業社長)が、大阪の東洋殖産岡林社長と、パ社(前出英文誌)今西啓師社長、それに東棉豊田不動産部長、同青木課長の四人を告訴した事件を、早く調べてくれといっている。土地代金の手付金五千万円と、現金四千五百万円を詐取されたそうだが、ある官庁が舞台になり、某高官が関係しているというので、調べてもらいた

い」と、法務当局に質問したのである。

パクリ屋、国会で活躍

広布産業事件のカラクリ

佐々木環なる人物は、大映の手形を外国銀行で割引いてやるといって、大映経理部長からパクった、その筋では有名なパクリ屋で、このような人物の話を、志賀氏が国会に持出すのは、不思議なことなのであるが、こうしてハッパをかけられた法務省は、「上申書や告訴状が出ている事実はあるが、内容は控えたい」と答弁した。

これが、いわゆる「広布産業事件」なのであるが、佐々木告訴状によると、「茨城県東海村付近の土地約三十四万坪を、近い将来に防衛庁が、演習場として十三、四億円で買い上げるから、その前に七億五千万円で買い取らないか、と持ちかけられ、その手付金五千万円と、防衛庁井原岸高政務次官らへの、政治献金四千五百万円とを、岡林らに詐取された」というものである。この東西で起きた二つの事件は、いずれも東棉不動産部にからむ、広大な土地の問題で、両方共に岡林が登場しているので、同一事件である。