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新宿慕情 p.060-061 こんな連中にはモッタイないのだ

新宿慕情 p.060-061 やはり、私のフランチャイズは、東口、中央口。スパゲティを食べるなら、丸井横通りのミラノ。
新宿慕情 p.060-061 やはり、私のフランチャイズは、東口、中央口。スパゲティを食べるなら、丸井横通りのミラノ。

いま時の連中は、ハンバーグといって出されれば、自分の知識、体験から、「これはハンバーグらしくないナ」と、疑問を抱かない。前にも、クドクド書いたように、「ハンバーグですよ」と、与えられたら、「これがハンバーグだ」と、思いこむように教育されているのだ。

マクドナルドのハンバーグも銀座の松屋通りの白亜のハンバーグも、ハンバーグである限り同じだ、という思考形式だ。

だから、わざわざ、銘柄を指定し、メモに書いて渡しても、コンデンスミルクとして買ってくる。

それなら、銘柄の違いは関係なくなる。ハンバーグ製造第二三一工場製、第八二工場製と同じという、全体主義国家の〝味覚〟である。新住居表示が地名のいわれや、いわくいんねんを無視して、ベンリ第一主義の画一性を重んじるのと同じ手口だ。

いまに、学校も、すべて、ナンバースクールになるだろうし、企業も、そうなるかも……。

明治時代に、第一銀行から始まって、第百何十何銀行とあったのだが、いま、このナンバーバンクが、いくつ残っているだろうか。

高等学校(旧制)も、二高、三高、四高と、ナンバーで呼ばれても、仙台、京都、金沢の……と、その土地柄と地名とが、ついてまわっていた。

私の中学(旧制)は、東京府立五中で、やはり、ナンバースクールだが、それぞれに地名が冠せられる。

私らの時代でさえ、府立九中などとなると、もう、程度が低いとして、バカにしたものだったが、戦争末期には、府立第十何中などと、ふえたようだ。しかし、小石川高校(新制)はむかしの五中、といわれるが、第十何中はいまの◯✕高校などとはいわない。

きまりの店と料理

コンデンスミルクだけではない。庶務の文房具係の娘は、ボールペンといえば、銘柄関係なしで、手当たり次第に、ボールペンを買う。

すると、ゼブラの替え芯は、他のメーカーに使えない、というムダができる。銘柄、つまりメーカー、つまり、店それぞれの〝味〟という認識がない。だから、こんな連中には、高かろう美味かろう、というのを食べさせても、ムダだと思う。モッタイないのだ。

「アラ、ジバンシーの石けん」

「ウワーッ、ヘルメスのネクタイじゃないですか」

そういう若い社員がいれば、惜しいナ、と思っても、ついつい呉れてしまう、というもの。お中元シーズンともなれば、やはり、〝違いのわかる〟相手でなければ、それこそ、〝豚に真珠〟である。

いやいや、まったく演説がつづいてしまった。……と、まあ、そんなわけで、同じ新宿でも、西口は、大阪のイミテーションだから、あまり、歩きもしなければ、出かけもしない。

洋食屋のいこい、一軒だけしか、まだ登場していないが、やはり、私のフランチャイズは、東口、中央口。駅のソバの丸井や、三越からこっちになる。

スパゲティを食べるなら、丸井横通りのミラノ。不愛想なオッサンが目障りだけど、やはりス

パゲティの専門店だけあって息が長い。

新宿慕情 p.062-063 ムースーローをオカズに

新宿慕情 p.062-063 ケーキなら、伊勢丹横の小鍛冶である。新宿では、小鍛冶のケーキ以上に美味いケーキには対面していない。
新宿慕情 p.062-063 ケーキなら、伊勢丹横の小鍛冶である。新宿では、小鍛冶のケーキ以上に美味いケーキには対面していない。

スパゲティを食べるなら、丸井横通りのミラノ。不愛想なオッサンが目障りだけど、やはりス

パゲティの専門店だけあって息が長い。

ここでは、いつも、ポークピカタを食べる。旨い。量もあって、よろしい。

決してひとりではいかない店というのもある。つまり、連れがいて、食べたいものの意見が合わない時は、三越のウラ、甲州街道に近いコメットだ。

ここは、和洋料理をともに出す。私の主義からは、キライなハズなのだが、コックと板前と〝才色兼備〟がいるものだから、とんかつもよければ、酢の物、茶わんむしも良し、といった感じなのだ。……残念ながら。

大衆てんぷらが食べたい時は、三越ウラといえば、船橋屋、つな八などを推す人が多いが、あれらは、やはり、値段に比べて味が落ちる。それよりも、三光町と三光町東の、ふたつの交差点にはさまれた、玄海の向かい側にある天春だ。

料理としての天ぷらではなくて、メシのオカズの天ぷら、と考えていただきたい。

ギョーザなら、もう、四、五年も行っていないので、自信にかけるウラミはあるが、やはり石の家。甲州街道寄り、靖国通り寄りのいずれも、家内と良く行ったものだった。

ギョーザとチャーメンと、ゴハンをひとつ。それに、ムースーロー(きくらげと肉とを、玉子で炒めとじしたもの)をオカズに、仲良く半分ずつ食べる。

この石の家のムースーローほどうまいムースーローには、まだ、出会ったことがない。

肉、きくらげ、玉子の、量の比率がドンピタなのであろう。炒めものは、火力、油、ナベの使

いこみ度、そして、材料の混合率でキマる、のだから……。

ケーキにだんごも

で、対象が飛ぶけれども、ケーキなら、伊勢丹横の小鍛冶である。

これまた、新宿では、小鍛冶のケーキ以上に美味いケーキには、まだ、対面していない。

だが、この店のカンバンが早いので、夜遅く、ケーキを食べたい時は、やむなく、区役所通りの、コージーコーナーだ。だが、こことて、〝次善〟とはいかず、二、三がなくて〝四番〟ぐらいだろうか。

そして、ついでに、東映横の追分だんご。だんごなら、ここに限る。アンコなどの種類やら甘さやら、目先を変えて、いろいろ出してはいるが、ともかくこの店のは、ダンゴそのものが上等だから。

むかしは、この店の幕之内弁当も良かった。新宿で、幕之内をたべたくなると(もっとも、幕之内弁当を出している店が少ないみたい)、必ず、追分だんごまできたものだが、二年ほど前に値上げしてからサッパリ。

材料もさることながら、味もダメで、値段と味とのバランスがくずれてしまった。

そこで、フト思いついて、伊勢丹の食堂へ行って、幕之内を発注してみたが、やはり、幻滅感を味わっただけだった。