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雑誌『キング』p.115中段 幻兵団の全貌 ピストルを突きつけ

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.115 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.115 中段

きとって、私の眼の前に突き出してから黙って机の上に置いた。そして続けた。

『何でもいうことをきくといったではないか』

『……』

私はもう承諾するより仕方ないことを知ってペンをとった。私の聞いた話では、ピストルを突きつけられて書いたという者もいるらしい。そして『ソ連邦のためにはどんなことでもする。このことは誰にも話さない。約束を破ったらどんな処罰でも受ける』といったようなことを、通訳の口述通りに、日本字で書いた。最後の行に、

『偽名ヲ阿部正ト使ウコト』

と、書き加えた。誓約書を納めると、『某中佐はロシア語を知ってるから特務機関だろう』とか『某中佐は軍国主義者に間違いないが、どんなことを話しているか』などと、しつっこくたずねたあげく、

『元憲兵の氏名を報告しろ』

と、命令された。

彼らはこうして誓約書をとってスパイにしたものを、決して民主主義者だと思っているわけでもないし、まして共産主義者だなどとは考えていない。ただ使えるだけ使って、あとは破れ草履のように捨ててしまうのである。

私は、元憲兵として有名な人を四、五名報告