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赤い広場―霞ヶ関 p050-051 ソ連代表部の指示で書かれたアカハタ記事。

赤い広場―霞ヶ関 p.50-51 ソ連代表部の指示で書かれたアカハタ記事。
赤い広場ー霞ヶ関 p.050-051 Akahata’s article is written under the direction of the Soviet delegation.

自殺した日暮信則は、この課の課長補佐で、しかも当時内閣調査室の情報部海外

第一班(対ソ情報)の班長を兼任していたのである。高橋は日暮の死によって一位上位にのぼって ソ同盟関係の諜報活動をやっている。

大隅道春は旧海軍の特務機関にあたる海上幕僚監部調査課勤務の三等海佐(海軍少佐)。

その他SP(ソヴエト・プレス)通信社の倉橋敏夫社長、キャノン機関の韓道峰(韓国人)、台湾引揚者の中島辰次郎、白系無国籍人のチェレムシャンスキーなどの各氏の名を、もつたいらしく並ベている。二人の民間人、四人の公務員、最後につけたりのような民間人や外国人。そしてこの記事の結びには、

この張本人はアメリカ諜報機関と警視庁であり、警視庁では警備第二部公安第三課長渡部正郎警視と、公安第一課長山本鎮彥警視正(前公安第三課長)である。

とある。

多くの紙数を費して「アカハタ」の記事を転載したが、このそれぞれラストヴォロフ事件の一月半後、その二ヶ月後、さらに三ヶ月後と間をおかれて掲載されたこの三つの記事は、並べて読んでみると、ラストヴォロフ事件についての、一貫した意図と目的とをもって書かれた記事であることが明らかである。

これは「アカハタ」や「真相」が幻兵団事件を徹底的にデマだと主張し、「アメリカの秘密

機関」の著者山田泰二郎氏が、一方的に米諜報機関だけを曝露したのと同じように、ラストヴォロフ事件で明らかにされたソ連スパイ組織の恐怖を、真向から否定して宣伝し、その憎悪を警察当局、ラ事件の捜査当局幹部に集中させようと意図しているのである。

だがそれよりも重大なのは、「アカハタ」の読者である、シンパや末端党員たちに〝心の準備〟をさせようとしていることである。

〝心の準備〟とは何か。ラストヴォロフ事件の捜査の進展と同時に、ソ連スパイ網が如何に国民各層の間に、巧妙に浸透していたかということが、いわゆる〝ブル新〟によって記事になったとき、それは〝ブル新のデマ〟と主張するための伏線である。

この三回の記事には、捜査当局が極秘にしている「山本調書」の内容の一部が明らかにされている。しかも、この三回の記事の時間的間隔は、同時に捜査の時間的経過におおむね付合して、しかも一手早いのである。「山本調書」の内容が、部内からアカハタに洩れるはずがない とすれば、この三回の記事はラストヴォロフ・スパイ網の内容を知っている、元ソ連代表部からの指示によって書かれたものだと判断されるのである。

 二 スパイは殺される! 二十九年八月二十八日午後、取調中の日暮氏が東京地検の窓から飛びおりて死んだ。三橋事件の佐々木元大佐といい、今度といい、ソ連のスメルシ(スパイに

死を!)機関の名の通りであり、「スパイは殺される」という不文律の厳しさを想って暗然とせざるを得なかった。