最後の事件記者 p.010-011 生れてはじめての留置場生活

最後の事件記者 p.010-011 我が事敗れたり 浅草のヨネサン 『オイ、ブンヤさん。電話だよ』『エ? 電話?』 私は自分の耳を疑った。ここは警視庁一階の留置場、第十一房である。
最後の事件記者 p.010-011 我が事敗れたり 浅草のヨネサン 『オイ、ブンヤさん。電話だよ』『エ? 電話?』 私は自分の耳を疑った。ここは警視庁一階の留置場、第十一房である。

我が事敗れたり

浅草のヨネサン

『オイ、ブンヤさん。電話だよ』

『エ? 電話?』

私は自分の耳を疑った。思わず上半身を起したほどだった。

ここは警視庁一階の留置場、第十一房である。七月二十二日の夕刻、逮捕状を執行されて、ブチこまれてから、生れてはじめての留置場生活に、毎日、新聞記者根性丸だしの取材を続けていた私だったが、〝電話〟と聞いては、驚きのため飛び起きざるを得ない。

板敷きの上に、タタミ表のウスベリを敷いた留置場は、正座が、留置人心得という規則によって原則である。しかし、旅馴れた私は早くも担当サンの眼を盗んで、横になって午睡をたのしん

でいたところだった。