▶第五号(42・8・11付)
一面「中央観光・疑獄事件に発展か」 二億円以上が蒸発 〝黒い噂〟札つきの顔ぶれ ◆「誤報論」④ ◆〈女ひとり〉安藤りかさん
二面「父ちゃんを返せ・三池の主婦を動かしたもの」 〝夜がこわい後遺症〟 ◆〈虚人実録〉池田大作氏
▶第五号(42・8・11付)
一面「中央観光・疑獄事件に発展か」 二億円以上が蒸発 〝黒い噂〟札つきの顔ぶれ ◆「誤報論」④ ◆〈女ひとり〉安藤りかさん
二面「父ちゃんを返せ・三池の主婦を動かしたもの」 〝夜がこわい後遺症〟 ◆〈虚人実録〉池田大作氏
▶第四号(42・8・1付)
一面「日本人にとって祖国とは何か」 内河事件に冷たい政府・野党 ◆真実を探る番組「シネマ・ベリティ」 ◆〈女ひとり〉重山規子さん
二面「電発・この疑惑の10年」 ウズ巻く利権と悪徳 「政治家と電発はグル」 ◆「誤報論」③
▶第三号(42・2・1付)
一面「われわれの税金は誰が使ったのか!」 談合・政治家暗躍の場 ◆デヴィさん入籍に疑惑
二面「辻政信氏の陰の演出者・〝五重スパイ〟と呼ばれた朝枝繁春氏」 利権は追わぬ〝黒幕〟 ◆「誤報論」➁
▶第二号(42・1・21付)
一面「かかる議員に一票を与えしは誰か」 松葉会と深い重政議員 ◆ある国際売春事件
二面「警察と民衆」 受難続きのホステス ◆「誤報論」①
▶第一号(42・1・1付)
一面「葉たばこ輸入にも〝黒い霧〟」 〝公社OB会社が独占〟 この現状を打破できないか ◆三人だけの住宅商社=問題の七社を尋ねて
二面「防衛庁が機密防衛作戦」 火をつけた三矢・怪文書事件 ◆〝黒い霧〟周辺の人言行録
今になって悩んでいる多数の人たちに、けっ起の決意を力づけてくれるだろう。
影なき男の恐怖におびえる、不幸な同胞たちよ。勇気を出して、一切を打ち明けなさい。ここは自由と平和の日本だ!
だが、一方にはこのような人たちを売国奴と呼び、自らは愛国者を気取って、欣然と〝幻兵団〟の一味として努力を続けている人たちのいることに注意しなければいけない。
スパイの手先となって、自由と平和の国日本に、新戦争を放火しようとする〝幻兵団〟!
国民は彼らの全貌を知り、彼らの活動を監視し、彼らの放火を未然に防がねばならない。
(終り)
その第二は、たとえば炭坑のチェーン・コンベヤが故障を起こせば、モーターを分解して完全修理せずに、力まかせにチェーンを引っ張って無理やり動かしてしまう、といったような原始的なソ連的方式から、一万人のスパイをつくっておけば、裏切り、死亡その他の事故で、一万人が百人に減っても、その最後までソ連へ忠誠を誓う百人に期待するということだ。つまりスパイの目減りを見越していたともいえよう。だからソ連にとっては、裏切りのスパイ達によって、その組織のある程度が暴露されても、十人でも百人でも〝本物〟が残ればよい、と考えているに違いない。
〝スパイ〟を拒否しても、殺されもせずに無事引揚げて、静かに平和な幸福につつまれて生活している人がいるということは、〝生きて帰る〟ために誓約書を書いてしまっても、引揚げてきた
事件がまだ現在進行中であるため、公表を許されなかった資料もあり、またやむなく伏せ字や仮名を用いなければならなかったものもあったが、以上述べたところで〝幻兵団〟とはいかなるものかということは、おおむね分かっていただけたことであろう。
このようにして組織された〝幻兵団〟にはいかにもロシア的な——ソ連的というよりは大まかで、単純で、原始的な〝ロシア〟という感じがする——二つの特徴が見出される。
その一つは、現ソ連政権のスパイ恐怖政治に対する絶対的なソ連人の服従心、すなわちソ連人のもつ〝NKへの死の恐怖〟から判断して、銃口の前で誓約書を書かせたことによって、あらゆる種類の日本人に、いつまでも脅迫の効果があると信じて、裏切りを予想しなかったことである。
働大隊にいる時のこと、NKの少尉と通訳の少尉に呼び出され、ドアに鍵をかけて履歴を書かされたのち、このことを一切口外しないと一札をとられて帰された。第二回は一週間後、ソ連と日本の政治形態を比較して政見を書け、と強いられ、第三回はさらに三週間後に呼び出された。
『あなたはこの誓約書にサインして私達の仕事に協力して下さい』
『私は日本人を売ってまで帰りたくない』
『妻子がまっているのに帰りたくないか』
『嫌だ、何回いわれても人を裏切るようなことをしてまで帰りたくない。絶対に嫌だ』
少尉は腰から拳銃を取り出すと私の胸につきつけた。私は叫んだ。
『撃てるなら撃て!』
『………』
少尉の眼は怒りにもえて無言だ。
『………』
『日本人捕虜を射殺してよいという、ソ連の法律があるのか!』
少尉は再び銃口をあげた。二人の息詰まるようなニラミ合いが数分も続いたのち、少尉は拳銃を腰へもどしてしまった。
あとがき
『大馬鹿野郎! 今に思い知らせてやるゾ!』
そのすさまじい権幕に、さすがの私も脇の下に冷汗をビッショリかいていた。
だが、拳銃や営倉の脅迫もなく、この二回にわたる調査に関して、絶対に他言をしないという誓約を一札入れさせられたのだった。
このままでは済むはずがないと、もんもんの日を送るうち、果たして一カ月後の七月末に転属命令が出て、第二三分所に移り、管内から集められた逃亡未遂者と共に九月二十三日夜貨車に積まれ、厳重な監視のもとに出発した。一月ほどの苦しい旅行ののち、到着したのは中央アジアの地の果てともいうべき砂漠地帯、デスメズガンの国際懲罰収容所だった。
ここには、ドイツ、ハンガリー、ルーマニア、イタリア、日本、中国、朝鮮、蒙古、白系露人など十四カ国人の、主として逃亡者や反ソ分子が、重労働と栄養失調にあえぎながら働いていたのだった。…私は懲罰の期間もすぎたのか、のちにカラカンダに移り、身体虚弱者としてついに帰国することが叶えられた。
㊁村上富雄氏の場合(談話)
(岩手県気仙郡矢作村、元少尉、ウォロシロフより二十三年四月復員)
二十二年九月十六日、ウォロシロフ五六三労
治部員の上級中尉からスパイたることを強要された。
第一回は収容所事務室で鍵をかけられ、調査尋問ののち誓約書をかけと迫られたが、『日本人の不利になる事は御免だ』
と断ってしまった。
それから約二週間して、収容所本部(街の中央にある)から自動車で呼び出しがあり、収容所付政治部将校に伴われて出頭した。
調査事項は前と同じで、日本語のうまい通訳を通じ、本部の政治部主任らしい少佐に、あるいはおどし、あるいは利をもって誘われた。
『君がこの誓約に署名したならば、帰国も一番先にしてやるし、君のためにも非常によい事がある』
『嫌だ』
『君は強情を張るけれども、一晩営倉に入るとすぐ目覚めるのだ。今のうちに腰を折った方が身のためだよ』
『嫌だ』
『もし君があくまで拒絶すれば、君の階級は剥奪されて、そして一般兵と一緒に石炭積みをしなければならなくなるだろう』
『それもやむを得ない、ともかく日本人を売ることは、俺にはできない』
少佐は怒りの表情もものすごく怒鳴った。
図版・エラブカ民主グループの活動組織
日本部長・クロイツェル女中尉 文化補佐官・星加薬剤少佐(愛媛) 講演部長・某軍医中佐 A収容所・文化補佐官・後藤典夫 B収容所・文化補佐官・星加兼務
クラブ員 清水達夫少尉(共産党員・日帰同委員長) 福島正夫中尉(東京)鳴沢少尉(広島)中野冨士夫法務大尉(東京)
秘書 加藤正満軍中校(本名・佐々木五郎) 多田光雄少尉(北海道出身・共産党北海道機関紙〝北海新報〟社員)
○各情報係は宣伝、啓蒙の間に現れる傾向をつかみ、系統を経て、一切がクロイツェル女中尉の手許に集まる仕組みになっている。
○クラブ員は民主グループでも急進分子で、秘書にはお気に入りの者がなっていた。
図版・エラブカ将校収容所の管理組織
日本人総首席・花井大佐 補佐官・吉田中佐 副官・荒木少佐
○日本人首席は給与、衛生について管理の責任をもつ。
○思想関係は左表の如くクロイツェル中尉の直接指導下におかれる。
この人は二十三年十二月に帰還して、いま東北の小都市で、ささやかなおでんやをやっている。A、B両収容所の総隊本部長、元駐米武官、花井京之助元大佐の補佐官として、エラブカ将校収容所の全般の状況を知っている、この吉田氏はいう。『まだ残留している人が帰ったら、収容所の裏面史と一緒に、〝幻兵団〟の真相を話しましょう。だが、今は何も聞かないで下さい』口をつぐんだ吉田氏は、もはや何も答えようとしない。
ハバロフスクの日本新聞系の〝幻兵団〟と並んで、エラブカ〝幻兵団〟が、事件の今後に演ずる役割は重要なものに違いない。
図版・エラブカ将校収容所の管理組織
図版・エラブカ民主グループの活動組織
三、魂を売らなかった男
銃口の前で誓約書に署名したばっかりに、自由と平和のこの日本で、死の恐怖に煩悶している数千の人たちのために、つぎの二つの実例をあげよう。
㊀杉田慶三氏の場合(談話)
(岩手県気仙郡大船渡町、元主計少尉、ハバロフスクより二十三年十月復員)
私はハバロフスク第三〇分所の大隊附給養係をしていたが、二十一年六月末、同収容所付政
されていた人の一人は、引揚者同盟の幹部であり、他の一人は官庁資料課長であること。またメムバーの有力な一員が、東京と大阪とで、それぞれ引揚者の親睦会を組織していること。アクチヴだった者にきけば、まったく否定する誓約書の事実も、反動だった者にたずねると事細かに話してくれること。——確かにエラブカ将校収容所が、〝幻兵団〟で果たしている役割は大きいものである。
誓約書を迫られ『日本人だから日本のことは売れない』と、つっぱねたところ、『それでは外国のことならよいだろう』と、つけこまれて、ついに署名をしたという吉田元中佐。
っているし、ソ連でも旧支配階級をつかもうとして、盛んに名門、金持ちの反動連に働きかけていた。荒木貞夫元大将の次男護夫元少佐は『モスクワの中佐の訊問内容から、私を握れば日本の支配階級の中に喰いこめると思ったらしい』と語り、細川元中佐も『私が華族だったというので、私の考え方を知って旧支配階級を支配しようとしたらしい』と、口を合わせている。エラブカ時代はコチコチの天皇護持派でありながら、一月の高砂丸で『直ちに入党します』と第一声をあげて、しきりにアカハタの宣伝に使われている板垣征四郎元陸相の次男正(二六)元少尉を前にして、有田元外相の三男浩吉(三四)元軍医少佐は、〝幻兵団〟に反動が多いということを『三年四年で思想の一変するような奴は、何をやらしても信頼できないからだ。つまりソ連側では、民主グループの奴などを相手にならないと思っているのだ』と、説明しているのは面白かった。
ともかく舞鶴に出張した私が、〝幻兵団〟を探すには、日の丸梯団にいるエラブカ帰りの将校をたずねて、色々と話をきき、それからそれへとたどってゆけば、誓約書の件を知っている人ばかりだった。
〝幻兵団〟で発展する筋はエラブカにある。民主グループの急進分子として、クラブ員と称
った。㊁金持ち、名門、特異な職業の者などを対象としていたこと。㋭反動の偽装と日本における地下潜入をハッキリと示していること。などの諸点である。
背が低く四角いアカラ顔の、そのNK中佐のもとに、モスクワ東洋大学の言語学科出身という腕達者な女中尉が日本人部長として、ニラミを利かしていただけに、一部の極反動を除いては、ほとんどが懐柔されてしまった。ことに、若い尉官たちの活動的な民主運動に圧迫を感じた、参謀肩章の佐官や、中年の尉官たちが、自己保身のために、意外なほど簡単に妥協してしまったらしく、参謀長が部下参謀をさしおいて先に帰還したという例が多い。
ここで女中尉のカバン持ちをしていたという、北海道の多田光雄(三二)元少尉は、『ソ同盟情報部との誓約書にいたっては、ふきだしてくる。これでみるとソ同盟側ではとりわけファシストをえらんで、誓約書をかかせたものらしい』と、アカハタ記者に語っているが、反動に誓約書をかかせたということは事実で、多田氏は〝ふきだしてくる誓約書〟の真相を知って、語るに落ちているわけだ。
今年の一月に入った高砂丸で帰ってきた元男爵細川元中佐参謀なども『〝幻兵団〟には民主グループは駄目で、反動から探している』と語