誓約書を書くにいたった状況はこうだ。昭和二十二年の暮れごろ、作業係将校の名前で、収容所司令部に呼び出された。もちろん、それまでの間に、数回呼ばれて身上調査は、うるさいほど詳しくやられていた。
さて、行ってみると、待っていたのは思想係の政治部員の中尉と、同じく少尉の通訳だった。そこで『政党は何党を支持するか』『思想はどうだ』『どんな政治がよいか』『ソ連のやり方はいいか悪いか』『ソ連に対するウラミは有るか無いか』などの問答があってから、
『オレは内務省の直系で、オレのいうことは内務省のいうことと一緒だが、オレのいうことを聞くか』
と切り出してきた。
『きけることならきく』
『何でもきくか』
『……』
『紙をやるからオレのいう通りに書け』
『何を書くのか』
『誓約書だ』
『誓約書なんか、何の誓約書だか分からずには書けない』
と、私はシャクにさわったので強硬に突っぱねた。すると中尉はいきなり腰のピストルを抜