思想係」タグアーカイブ

雑誌『キング』p.115上段 幻兵団の全貌 誓約書を書け

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.115 上段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.115 上段

誓約書を書くにいたった状況はこうだ。昭和二十二年の暮れごろ、作業係将校の名前で、収容所司令部に呼び出された。もちろん、それまでの間に、数回呼ばれて身上調査は、うるさいほど詳しくやられていた。

さて、行ってみると、待っていたのは思想係の政治部員の中尉と、同じく少尉の通訳だった。そこで『政党は何党を支持するか』『思想はどうだ』『どんな政治がよいか』『ソ連のやり方はいいか悪いか』『ソ連に対するウラミは有るか無いか』などの問答があってから、

『オレは内務省の直系で、オレのいうことは内務省のいうことと一緒だが、オレのいうことを聞くか』

と切り出してきた。

『きけることならきく』

『何でもきくか』

『……』

『紙をやるからオレのいう通りに書け』

『何を書くのか』

『誓約書だ』

『誓約書なんか、何の誓約書だか分からずには書けない』

と、私はシャクにさわったので強硬に突っぱねた。すると中尉はいきなり腰のピストルを抜

雑誌『キング』p.107下段 幻兵団の全貌 新聞記者的なカン

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.107 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.107 下段

を行った。ある種というのは、ほとんどが大学高専卒の人間で、しかも原職が鉄道、通信関係や、商大、高商卒の英語関係者であった。

その三は、もはや二冬を経過して、ソ連にもちこんだ私物は、被服、貴重品類ともに、掠奪されるか、売りつくすかでスッカラカンになっていた。そんなわけで金(ルーブル紙幣)がないはずの人間が大金をもっている。あるいは潤沢にパン、煙草、菓子などを入手している。

その四は、ある時期からその人間の性格が一変して、ふさぎこんでくること。しかも、それらの連中は、何かともっともらしい理由のもとに、しばしば収容所司令部に呼び出された。そして、そののちにそのように変化するか、変わった後において呼び出されるようになるか、そのどちらかである。

このような一連の〝腑に落ちないこと〟をそのまま見逃すような私ではなかった。ソ連のスパイ政治——収容所内の密告者——前職者、反ソ分子の摘発——シベリア民主運動における〝日本新聞〟の指導方針——民主グループ員の活動——思想係の政治部NK将校——呼び出しとそれにからまる四つの疑問——収容所内のスパイ——ソ連のスパイ政治。これらのことがいずれも相関連して、私の新聞記者的なカンに響いてくるのだった。新聞記者は疑うことが第一