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雑誌『キング』p.126下段 幻兵団の全貌 合言葉には三種類が

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.126 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.126 下段

四、連絡

こうして生まれた、このスパイ組織は、どうのように動きだしただろうか。その連絡についてみてみよう。

1 符牒 第一番にあげられるのは工作名(偽名)である。これはⒶ、Ⓑともに持っているが、Ⓐの中にはない者もある。この名前が、どのような根拠によって、名付けられるかは不明であるが、苗字だけが必要であるらしく、名前はそれほどでもないらしい。大矢(口頭でオーヤといわれて、本人が字をあてたもの)と名付けられた男が、『カーク・イーミヤ?』(名は何というか?)と質問したところ、チョット考えて『サブロー』と答えた(タイセット)という。工作名は、誓約書の末尾に記される。報告書、答申書、報酬の受領証など、一切の仕事にこの名前だけが使われる。例をあげると、阿部正(チェレムホーボ)、坂田栄、高平保(ハバロフスク)、森、大木(ウォロシロフ)などである。

合言葉はⒷにだけ、誓約のさいに、偽名に続いて与えられている。合言葉には次の三種類がある。

イ 呼びかけ式

『貴方の事業は成功していますか?』
『貴方の健康は宜しいですか?』

雑誌『キング』p.125中段 幻兵団の全貌 前職者と反動の摘発

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.125 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.125 中段

ホ、〔ライチハ〕

住所、氏名、部隊名
(前半恐怖のため記憶なし)
今日ノ訊問ハ日本内地ニ帰ッテカラモ、親兄弟、妻子等ハモチロン、親類ノ人ニモ話サナイコトヲ誓イマス

ヘ、〔アルマアタ〕

宣誓書
ソ連内務省ノ実施スル諜報業務ニ協力スルコトヲ宣誓スル

以上あげた六例は、文面に地区別の違いはあるけれども、いずれもⒶに属するもので、前職者と反動の摘発を目的としている。そして、報告書のために偽名を与えられているのもあるが、偽名もない者すらある。命令者、あるいは報告先としては、ソ連政府またはソ連内務省となっている。違約の際の罰目は、『法律』『刑法』『刑法第何條』となっているが、いずれも同じである。

ところが、Ⓑ種となると、これらとは全く違う。

B種

イ、〔バルナウル〕

誓約ノコト
私ハ赤軍ノタメニ米軍ノ情報ヲ提供スルコトヲ誓イマス
(以下、違約の際の條件などはⒶと同じ)

ロ、〔ハバロフスク〕