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赤い広場ー霞ヶ関 p.168-169 シベリヤ・オルグ団、土井祐信、田辺稔、清水達夫、沢準二

赤い広場ー霞ヶ関 p.168-169 The spies and organizers that the Soviet Union has educated and trained Japanese POWs in Siberia are now performing their duties.
赤い広場ー霞ヶ関 p.168-169 The spies and organizers that the Soviet Union has educated and trained Japanese POWs in Siberia are now performing their duties.

〝ナホトカ天皇〟津村謙二氏らのナホトカ・グループが帰国して組織した「ソ連帰還者生活擁護同盟」(ソ帰同)が、「日本帰還者同盟」(日帰同)と変り、二十四年十一月、日本新聞グル

ープが帰国するにおよび、二十五年はじめに組織の改正が行われ、同年春の徳田要請問題にからんで、津村氏らの一派が粛清されたことはすでに述べた。

そして二十五年五月、客観情勢の変化によりとして(ソ連代表部の指示で)発展的解消をとげて日ソ親善協会内へ吸収された。二十六年春ごろから、再編成が行われて「ソ連帰還者友の会」として再び表面に浮び上ってきた。いわゆる第二期具体化の段階と符節を合している。文化工作隊としての「楽団カチューシャ」はもちろん存続していた。

友の会の性格について、当局では「一般工作のアクチィヴの養成」とみているようである。そして幹部はオルグとなって独立任務を持ち、それぞれの分野で働らいている。

ここに紹介した何人かのオルグがそれである。政治工作は国民会議のオルガナイザー土井祐信氏がそれであり、経済工作は貿易促進会の田辺稔氏がそれであり、文化宣伝工作は日ソ親善の清水達夫、楽団カチューシャの沢準二両氏がそれである。

いずれも日帰同時代の幹部であることから、ソ帰同—日帰同—発展的解消—友の会という経過は、一貫して流れているソ連の対日政策の一つの現れとみることができよう。

ドムニッキー氏が、日ソ貿易で損をしたという商社に向って、こういったことがある。

『その商社の資本や系列や、歴史やその他の一切の条件は問題ではない。たゞ、ソ連貿易の実績のつみ重ねだけが問題である』

日ソ貿易は三十六社が加入している。しかし中心になっているのは五社協定を結んだ、進展実業、大倉商事、永和商事、相互貿易、東邦物産の五社である。老舖で資本力の大きい商社には負担でないことも、新興の商社には死命をも制しかねない条件となる。そのような事象に対していったド氏の言葉である。

進展実業のオイストラッフ氏招待も「実績のつみ重ね」の一つであろう。「実績のつみ重ね」こそ常に一貫して流れているソ連の対日政策の実態である。日ソ交流も、日ソ交易もすべてそうである。

シベリヤの「人間変革」の実績のつみ重ねが、いま友の会を中心とするシベリヤ・オルグ団となって成果をあげつつあるのだ。

ソ連が、日本人に対して行った「技術教育」の成果であるスパイは、その殆どをバクロされて、失敗したかに見える。しかし、その「思想教育」の成果であるオルグは、かくの如く沈潜十年を経て、今ようやくその任務を果しつつある。あの何万というソ連謳歌者のうち、今ここにその名を留めているのは、まさに十指にもみたない人々である。失敗したかにみえるスパイとて同じであろう。——ここにソ連の暗さがある。