昭和27年暮れ・1952」タグアーカイブ

迎えにきたジープ p.000-001 佐々木は殺されたのです!

迎えにきたジープ p.000-001 The Kaji and Mitsuhashi spy cases were making a noise in 1952. I was visiting the bereaved family of Katsumi Sasaki, who was known as a liaison of the spy cases.
迎えにきたジープ p.000-001 The Kaji and Mitsuhashi spy cases were making a noise in 1952. I was visiting the bereaved family of Katsumi Sasaki, who was known as a liaison of the spy cases.

悲しき独立国民

一 默って死んだ日本人

鹿地・三橋スパイ事件が騒がれていた、昭和二十七年暮のある日のこと。私は三橋自供にレポとして名前の浮んできた佐々木克己氏の遺族を訪ねていた――

清子未亡人はツト顔をあげた。品の良い、まだお嬢さんらしいあどけなさの残っている頬に涙の跡が乾いている。耳のあたりから口許へと引かれた、深い深い苦悩のかげがいたましい。力強い高い言葉がこみあげてきたが、それが唇をついて出るころには、永年のたしなみがそうさせるのであろうか、叫びにはならないで低い呟きとなって訴える。

『誰が、誰が、この貧しくとも愉しい家庭から、幸福と平和とを奪ったのです! そうです、形は自殺でした。用意周到な覚悟の自殺でした。では、何故、佐々木は死なねばならなかったのです。妻と二人の子供とを残して……

佐々木は殺されたのです。そうですとも、殺されたのです。私も、子供たちも、そう信じています! 誰かが殺したのです!』