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新宿慕情 p.114-115 夜の彼女らの艶姿など想像もできないほど

新宿慕情 p.114-115 オカマの多くは、こうして、女装によって、女の芸を売り物にして生活しているらしい。そして、それはそれなりに健全で…
新宿慕情 p.114-115 オカマの多くは、こうして、女装によって、女の芸を売り物にして生活しているらしい。そして、それはそれなりに健全で…

事実、シベリアの捕虜生活でも、可愛らしい少年兵がいたので、男色はあった。もっとも、そ

れも、体力がつづいていた二十年の暮れまでで、それ以後はサッパリだった。

あの慢性飢餓の中では、軍医と医務室勤務者、炊事兵と主計に、洋服職人とか大工などの、腕に技術のある連中は、暖かい部屋と豊富な食料とで、ロシア女と遊べるだけの、体力、気力を持ちつづけたようだった。

オカマにもランク

松喜鮨のヤッちゃんに買わされたレコードは、こんな内容である。

▼おかまの政治演説(演説)▼薔薇の刺青(唄)▼告白録(身上話)▼転落詩集(唄)▼天国と地獄(合唱)▼青少年のための男色入門(唄)▼男娼巡礼歌(唄)……。

これでみても、男色とか、男娼という言葉が使われており、転落したという感じで、身上話をしたがっている彼女(?)らの意識がうかがわれる。

ところが、ヤッちゃんは「白浪五人男(劇)」で、台詞をウナっているだけで、解説に付いている広告でも、「江戸前・松喜鮨・東京のかくれた名所、ここが有名なホモ寿司です」と、明るい。

赤坂の「紫」の、ラインダンスのショーなどは、踊り子が、やや大ぶりなだけで、テレビのナンバーワン・ダンサーズなどに、優るとも劣らない。

衣装の豪華さや、ダンスの訓練なども、堂々たるものだ。ただ、言葉を話すとダメだし、あまり明るい光線でもダメ。

六本木の「バレンチノ」なども、店が狭いので、群舞はないが、唄も踊りも、なかなかどうして、といえる。

銀座の「やなぎ」は、他の各店が、いずれも洋風なのに対して、純日本調だ。

カウンター前にゴザを敷いて、ママの唄で、四人が揃って踊る時などは、あでやか、といえよう。ここの君香クンなど、まげも似合うし、唄声は、女そのものである。

オカマの多くは、こうして、女装によって、女の芸を売り物にして生活しているらしい。そして、それはそれなりに健全で、タレントとして〝生活の設計〟も堅実に見受けられる。

日中、新宿の盛り場で、オープンシャツの青年に目礼されて、スレ違ってから「ハテ、だれだっけ?」と、ふり向いて考えてしまったことがある。

この、マジメそうな青年も、またふり返って、ニッコリと笑った。笑顔と、手に提げたカツラ箱とで、「アア、やなぎ……」と、やっとわかったのだが、ひる間見る彼らの姿からは、夜の彼女らの艶姿など、想像もできないほど、チャンネルを使いわけている感じがするのだ。

前に、ヤッちゃんたちのレコードのジャケットについて、私は、「〝醜怪〟としかいいようのない女装の連中」と、書いたのだが、この写真が、篠山紀信の手になるだけに、そんな感じの連中を前面に大きく出しているかも知れない。彼女(?)たちの、性生活については、十分な知識がないので果たして、私の体験したような程度なのか、もっと、スサマジイものなのか、そこまでは知らないが、〝醜怪〟なのはやはり、二流、三流の、芸のないオカマであろう。

新宿慕情 p.116-117 案内した悪童どもは「特訓の成果は十分だった」と

新宿慕情 p.116-117 正力家の娘婿であり、内務官僚として、エリートコースを進んでいった小林さんには、たいへんな〝初体験〟であったらしい。
新宿慕情 p.116-117 正力家の娘婿であり、内務官僚として、エリートコースを進んでいった小林さんには、たいへんな〝初体験〟であったらしい。

前に、ヤッちゃんたちのレコードのジャケットについて、私は、「〝醜怪〟としかいいようのない女装の連中」と、書いたのだが、この写真が、篠山紀信の手になるだけに、そんな感じの連中を前面に大きく出しているかも知れない。彼女(?)たちの、性生活については、十分な知識がないので果たして、私の体験したような程度なのか、もっと、スサマジイものなのか、そこまでは知らないが、〝醜怪〟なのはやはり、二流、三流の、芸のないオカマであろう。

芸がなければ、売春するより生きてゆく途はない。倒錯性慾者などは、このジャンルに含まれるようだ。

新宿の街の、小さなオカマバーなどには、演歌の歌い手さんのような着物を着て、態度や話し方だけ、女ッぽくする〝異様な感じ〟の男たちがいる店もある。

そんな店は、ワイ雑で、彼女らのホステスぶりも、下品で、エロ・サービスに近い。

エリートの初体験

NTVの小林与三次社長が、自治省次官を退官して、読売に入社した当時、編集局の中堅どころの記者たちと、しきりに、懇親を深めて、新聞社の幹部たるの〝教養〟を、身につけようとしていたものだ。

そんなある日。記者たちが、新宿は区役所通りの「ローズ」という店に案内していった。

正力家の娘婿であり、内務官僚として、エリートコースを進んでいった小林さんには、たいへんな〝初体験〟であったらしい。

女たちに囲まれ、〝部分〟をつかまれたり、下卑た媚態などで迫られたりするのだから、ビックリ仰天もムリはない。

案内した悪童どもは、「特訓の成果は十分だった」と、よろこんでいたのだから、目撃者でなくとも、察しはつくというものだ。

(写真キャプション)西銀座の「やなぎ」では、芸者さながらの組踊り

〝特訓〟といえば、こんなこともあった——私が警視庁記者クラブ詰めだったころ、読売の原副社長を、新任の社会部長としての歓迎パーティに招いた。

会場は浅草。余興として、保安課のベテラン刑事に頼んで、〈花電車〉を呼んだ。

六区ウラあたりの、小さな旅館の一室に、クラブ員と部長とが並んだ。隣室では、シロシロのショーが行われていて、アヤシ気な物音がしたりする。

〈花電車〉は、いうなれば、奇術ショーのフンイキだ。皮切りは、筆をハサんで、「祝・部長就任」などと、達筆で書いてくれたりする。

チリ紙を丸めたものに、ヒモをまきつけ、それをハサミこんだ上、他の端を、座敷卓の足に結びつけ、卓上に男をひとり乗せて、ジリ、ジリッと引っ張って見せる。