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雑誌『キング』p.120下段 幻兵団の全貌 目的は二種ある

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 下段 三、組織の全貌
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 下段 三、組織の全貌

とが、それを裏書きしているのである。

一、目的

この組織の目的とするところは、後に記された誓約書によって明らかにされているが、ハッキリと二種に分類される。

その第一種(以後Ⓐと称す)は、戦犯、反動の摘発を目的とするもので、使命遂行は一応在ソ抑留間のみに限られている。すなわち、終戦と同時に、憲兵、警察官、特務機関員、情報関係者らの、いわゆる前職者は、ソ軍進駐を前にしてそれぞれの履歴を抹殺し、偽名を用いて、一般兵や地方人を装っていた。吉村隊事件の主人公、元憲兵曹長池田重善氏が、妻の実家の姓を名乗って吉村と称していたのがその例である。

スパイ政治の国ソ連が、何十万という日本人を抑留して調査するのに、どうしてスパイ制度を採用しないはずがあろうか。前職者も含んだ戦犯容疑者、反ソ反動分子の摘発と、俘虜政策上からの俘虜情報の入手のため、第一種スパイⒶが組織されたのだ。

その第二種(以後Ⓑと称す)は、第二次大戦後に残った相対立する二大勢力の一つ、すなわち対米情報の入手を目的とするもので、使命遂行は当然日本帰還後とならざるを得ない。すなわち第二種スパイⒷは、工作名(偽名)のみではなく、

雑誌『キング』p.120中段 幻兵団の全貌 モスクワの指令だ

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 中段 三、組織の全貌
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 中段 三、組織の全貌

間をもって終了するとみられる者にも、偽名のない者とある者もあれば、またC氏の如く在ソ間は全く飼い殺しで、偽名、合言葉を与えられ、誓約書には帰還後のみ遂行し得る目的を明示された者と、さらに写真まで撮影されている者もある。

人選に関しては、D氏の如く戦犯容疑者でありながら、毒をもって毒を制する如く起用され、さてはE氏の如く幼年学校、士官学校という経歴の純軍人をも、その履歴にカモフラージュしている。

これらの事実に徴してみると、元大本営参謀で戦争中止を天皇に直訴して、東條に忌まれて朝鮮軍にトバされたという種村佐孝元大佐の言うように、この組織は『各収容所付の政治部員の独断ではなく、モスクワの中央情報部の指令だ』とみるべきであろう。

この組織の選考、任命、連絡の各段階を詳細にみると、全ソ連地区に共通したものがあるこ

雑誌『キング』p.120上段 幻兵団の全貌 五人は氷山の一角

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 上段 三、組織の全貌
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 上段 三、組織の全貌

三、組織の全貌

ここにあげた五人の場合によって、死の脅迫と、帰国優先の利によって組織された、スパイ網の存在は、もはや疑うことのできない事実であることが明らかになったであろう。事件はようやく始まったばかりであり、今後の調査に影響があるため、仮名を用いたものもあるが、略歴を示した通り、いずれも都内に実在する人物である。

この五人の例は、ただ氷山の一角にすぎなく、何十人という人々の告白によって、〝幻〟の如くに思われたその実態も、次第に明瞭なものとなってきた。収容所の地区も、イルクーツク、バルナウル、エラブカと、東部シベリアから西部シベリア、さらに欧露と西漸するかと思えば、南下してカザック共和国のアルマアタ州に移り、さらに東に飛んでハバロフスク、ウォロシロフというように、全ソ連地区をおおっている。

また使命に関しても、A氏、B氏の如く在ソ

雑誌『キング』p.120上・中段 幻兵団の全貌 ソ連に逃げて来い

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 つづき上段・中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.120 つづき上段・中段

次第解消すべし』と命ぜられました。少尉に別れを告げたのは、ナホトカ第三分所の横かげでしたが、最後に彼はいいました。『日本でアメリカ帝国主義者に圧迫されたら、いつでもソ連に逃げて来い。内務省には名簿が君を待っているから大丈夫だ』と。