最後の事件記者 p.260-261 交成会青年部の妙齡の乙女

最後の事件記者 p.260-261 色情のインネン、妙佼先生のお手配、新しい奥さん、等々。その視線の中に、隣にならんで坐っている、女子青年部員の、紺のスカート、発育したモモとが入る。
最後の事件記者 p.260-261 色情のインネン、妙佼先生のお手配、新しい奥さん、等々。その視線の中に、隣にならんで坐っている、女子青年部員の、紺のスカート、発育したモモとが入る。

お礼詣りが、無事とどこおりなく済むと、翌々日は祀り込みだ。本部で頂いた鈴木家の総戒名を、支部の幹部が、私の自宅へ奉遷し参らせて、諸顕安らかに静まり給えかしと、お題目をあげ

る儀式である。

このことのあるのは、かねて調査で判っていたから、城西のある古アパートの一室を、知人の紹介で借りておいた。家主には事情を話し、チャブ台その他、最少限の世帯道具も借りておいたのであった。

幹部婦人の愛欲ザンゲ

その当日、幹部サンと導き親のオバさん、それにもう一人、交成会青年部の妙齡の乙女と三人が、連れ立って本部からそのアパートへやってきた。

儀式が終ってから、幹部サンはやがて法話のひとくさりをはじめたのであった。その法話も、いつかザンゲに変っていた。

『これでネ。私も色情のインネンがあってネ。一度では納まらなかったのですよ。』

優しい調子で、こんな風に話しはじめた幹部サンは、彼女の悲しい愛欲遍路の物語をはじめた。富裕な商家の一人娘に生れた彼女は、我儘で高慢に育った。年ごろになったころ、同郷の知人からあずかって、店員として働らいていた青年に恋をされた。

しかし、気位が高くて、店員なんぞハナもひっかけなかった彼女の態度に、その青年は破鏡の胸を抱いて故郷へ帰っていった。

『あとでそのことを知ってネ。私の色情のインネン、そして、そのごうの深さに恐しくなりましたよ』

最初の夫との結婚話、それに失敗した第二の結婚、そして、いまの生活——それは、彼女の性欲史であった。彼女のその物語は、もう窓辺に宵闇をただよわせている部屋の薄暗さと相俟って、私は何かナゾをかけられているのかナ、とも考えたりした。

他人に恋心をよせられるのも、再婚するのも、浮気するのも(とは彼女は口にこそしないが)、すべてこれ、色情のインネンのしからしむるところだという。そのごうから逃れるための修養だというが……。

『しかしネ。なかなか修業が足りなくて……。あなたも、熱心に修業しなくちゃあネ』

色情のインネン、妙佼先生のお手配、新しい奥さん、等々。私は正座してうつむき、抜けかけた膝をみつめ、ジュズをにぎってそんなことを考えていた。その視線の中に、隣にならんで坐っている、女子青年部員の、紺のスカート、発育したモモとが入る。

美しい部類に入るその子は、眼の下のホクロが、色白の肌に鮮やかで魅力的だ。