雑誌『キング』p.106中段 幻兵団の全貌 昭和二十年の秋

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.106 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.106 中段

連製日本人スパイに関する情報なのだ。しかも、その情報によれば、それはシベリア民主運動を芽生えさせ、育てあげ、ついにあの日の丸を破り、花束をふみにじるという、けんらん豪華な〝赤い復員〟旋風にまで昇華させた指導者〝日本新聞〟につながりがあるらしい様子だったので、今、小針氏の重大決意を示した発言に手の震えを感じたのも無理からぬことだった。

ここで私は、読者の理解を助けるため、委員会の休憩を利用して、話を昭和二十年の秋にまでもどすことにしよう。

終戦後の九月十六日、私たちの列車が内地直送の期待を裏切って北上をつづけ、ついに満洲里を通過したころ、失意の嘆声にみちた車中で、私一人だけは街角で拾った小さな日露会話の本で、警乗のソ連兵に露語を教わりながら、鉄のカーテンの彼方へ特派されたという、新聞記者らしい期待を感じていた。西シベリアの炭坑町に丸二年、採炭夫から線路工夫、道路人夫、建築雑役とあらゆる労働に従事させられながらも、逞しい私の新聞記者精神は、あらゆる機会をつかんではソ連人と語り、その家庭を訪問し、みるべきものはみ、聞くべきものは聞き、記者としての取材活動だけは怠らせようとしなかった。