政治評論家の藤原弘達、戸川猪佐武氏らも、評議員としてその研究会に名を並ねている。
「戸川猪佐武氏は、読売政治部記者から、政治評論家となり、さきの選挙に神奈川三区から出馬して、落選こそしたが、得票は二万弱で、初出馬以上の実力をみせた人物。実弟雄次郎氏は、読売社会部記者時代、芥川賞を得て、作家菊村到に転身し、作家出身の政治家として有名な戸川貞雄氏を父に持っていることは、すでに世間に知られている」
ここまで記述すれば、もはやすべては明らかとなってしまう〝人間関係〟である。田川パンフレット第七頁には、こう書かれている。「しかし、神奈川県は申請通りの県立公園を造る意思がなく、元知事秘書上妻某、戸川某氏らのあっ旋によって、国民政治会専務理事御喜家康正氏の計画しつつあった、株式会社サイエンス・ランドに、この土地を譲る方針を固めつつありました」
この文中に、戸川某氏と指さされているのが、猪佐武氏であることは明らかである。そして猪佐武氏の父貞雄氏も、ランド計画に参画しており、同社の役員予定に列していたのだが、流説によれば、田川議員が「戸川如きが役員に入っているような会社など、応援できるものか」と、罵ったと伝えられるに及んで戸川氏は摩擦をさけるため、身を退いたのであった。
戸川貞夫、猪佐武父子は、河野一郎氏とその政治的同志たちの、政敵である。それだからこそ、リーフレット上にも現れなかった戸川貞夫氏の名前は、まずこうしてランド計画から消え去った。御喜家氏に対する、怪文書という卑怯な人身攻撃につづく、ランドの生まれ出づる悩み
の一つである。
二月十四日付リーフレットで、御署名順の筆頭発起人として、見えすいた登場をしてきた内山知事へも、〝政敵〟たちの風当りは強かった。田川パンフレット第八頁「とくに内山知事は、自分が払下げの申請を行い、自分が関東地方審議会臨事委員として、払下げの審議に参加し、さらに株式会社の設立発起人筆頭となって、特別な契約を結ぼうと努力するなど、奇怪な行動をとっています」と、攻撃され、さらに、四月七日の決算委の質問中でも「そういうことで、県が申請をしつつあるというときに、知事さんが別の会社の発起人になっておるというところに、地方制度からみて、地方自治からみて、少しおかしいものがあるのじゃないかと、私ども思うわけです」と、追及されているほどだ。
これは正論である。御喜家—戸川(猪)—戸川(貞)—内山という、ヒューマンリレイションズが読めた以上、内山知事の県立公園からランドへの転身声明(三月十六日付県公文書)からいっても、内山知事の名を筆頭発起人として印刷するのでは、ランド側の無神経で粗雑な頭脳がうかがわれて、これでは果して、青少年の科学教育の振興という大義名分を、国有地六万坪の名儀を書き換えて、開園にこぎつける日まで、持ち続けることが出来るのだろうかと、疑念も湧くというものである。身障児の治療センターにと払下げられたら、豪華なマンションになったというケースが、問題になったのも最近の例である。