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事件記者と犯罪の間 p.168-169 久し振りの快事件だというのに

事件記者と犯罪の間 p.168-169 華族でも名門蜂須賀家、侯爵の急死、愛妾——金と女が出てくる、絶好の社会部ダネだし、登場人物もスターばかり、小道具にピストル、そしてギャングだ。
事件記者と犯罪の間 p.168-169 華族でも名門蜂須賀家、侯爵の急死、愛妾——金と女が出てくる、絶好の社会部ダネだし、登場人物もスターばかり、小道具にピストル、そしてギャングだ。

例えば、両国の花火大会の記事は、ニュースではあるが、誰でもがこのニュースにふれること

ができる。公開されているニュースだからである。機会は均等である。

新聞記者の中にも、こういう公開されたニュースしか書けない記者がいるし、それが多い。特ダネの書けない記者である。それは、その記者が、不断の勉強を怠っているからである。記者の財産である、ニュース・ソースの培養を心がけていないからである。

役所を担当しても、その役所のスポークスマンしかしらないし、スポークスマンの言い分を文字にして本社へ伝えるだけである。この発表を咀嚼して批判を加えることもできないのである。これが果して、新聞記者であろうか。だから、役所の発表文がそのまま活字になって、紙面にのるだけである。心ある読者は、一度役所の記者会見なるものを覗いてみられよ。二十人もの記者がいても、質問の発言をするのは二、三人だけである。それは決して代表質問ではない。並び大名の記者たちには、質問すら浮んで来ないのである。

あんたにやるよ

私はサツ廻りののち、法務庁、国会、警視庁、通産省、農林省、法務省と、本社の遊軍以外にこれだけの役所のクラブを廻ってみたが、どこのクラブでもそうである。記者会見で談論風発という光景は少ない。質問さえできない記者は、他社の記者の質問によって「成程そうか」と思い、本社へ送る時には、自分の質問であるかの如くよそおうのである。

ニュース・ソースのない記者は、全くのサラリーマンである。その役所にいれば、その役所の

ことはその時だけ。他のことは我関せずで、そのクラブを去ったならば、もうその役所のことは判らないのである。

この場合、小林も王も私のニュース・ソースだったのである。もちろん、元山にも警察へ行く前に、自分の言い分を宣伝しておきたいという気持もあったろう。私は元山の話はさておき、横井との会見の理由が、蜂須賀侯爵家の債権取立問題と聞いてのりだした。

私は社へ電話して、「元山に会った。だが彼の話は宣伝だから面白くないが、蜂須賀侯爵家の債権問題が面白い。誰か記者をやってほしい」と伝えた。

華族でも名門蜂須賀家、侯爵の急死、愛妾——金と女が出てくる、絶好の社会部ダネだし、登場人物もスターばかり、小道具にピストル、そしてギャングだ。情報通の元子爵を叩き起して……と考えながら、私は社へきてみたのだが、社では何の手配もしてなかった。「畜生メ、ワカラズ屋ばかりだ。こんなネタを見送るなんて、読売社会部のカンバンが泣くヨ!」

私は心中で怒鳴って、黙って元山の原稿だけ書くとデスクに出した。私は萩原君を付近の喫茶店に誘うと、久し振りの快事件だというのにニュース・センスのなさを散々に毒づいてやった。何しろ「事件」が判らないのである。

しかし、翌日、私は念のため某元子爵に会って、蜂須賀家の内情をきいてみると、亡くなった正氏侯爵が奇行の人で、いよいよ面白い。ところが、翌日朝、毎日が一通り書いてしまった。

「ウチの方が余ッ程深く掘っているのに!」と、また舌打ちである。

迎えにきたジープ p.166-167 最も重要な看板は「極東軍」

迎えにきたジープ p.166-167 U.S. officials are confused about the fact that Prime Minister Hatoyama said in a meeting with foreign reporters, "To store atomic weapons in Japan should be accepted if it can strengthen peace."
迎えにきたジープ p.166-167 U.S. officials are confused about the fact that Prime Minister Hatoyama said in a meeting with foreign reporters, “To store atomic weapons in Japan should be accepted if it can strengthen peace.”

思わぬ反響に驚いた鳩山首相は十六日の記者会見で、

『原爆を日本においてくれという、アメリカからの話もなければ、またそうした切迫した状態に、日本が置かれているとも考えていないが、先の会見で仮定の議論として出たので、私の腹の中を言っただけだ。言いかえれば、必要のないのに答えたわけだ』(十六日付読売夕刊)と弁明した。

またワシントン三月十四日発UP電(十六日付毎日新聞)は次の通り報じている。

「鳩山首相が十四日外人記者団との会見で『日本に原子兵器を貯蔵することは、これによって平和を強化しうるなら認めるべきだ』と、発言したことについて、米官辺筋は当惑の色をみせている。

米国務省では、これが既定事実か、または近く実際的な交渉にとりあげられる段階にあるかについて、何ら知るところがないと述べている。

純粋に軍事的見地からいえば、日本に原爆を貯蔵することは、共産側が太平洋で原爆戦争に乗出した場合、これに反撃するためには有効なものとなろう。

しかし現在の日米間の政治的関係の枠内で、これに必要な協定を結ぶことが可能であるかどうかは、高等政策の問題で、軍事的概念以上のものである。このため軍部筋では、この問題について論評を加えるのをさけている。

しかし米外交筋では、鳩山首相の言明は、中ソ両国の日本に対する圧力が強くなった場合、日本のとるべき道について述べたものとみている。

しかし同首相は、東西間の緊張緩和の希望を表明しており、これは鳩山首相が原爆貯蔵問題について、決定を行わねばならぬ事態にならぬよう、望んでいるものと観測されている。」

この原爆貯蔵容認問題を、冷静に考えるためには、この秘密のNYKビル(郵船ビル)のタウン・プラン班の仕事を、一つの重要な資料として検討してほしいのである。

いずれにせよ、このタウン・プラン・マップの基礎は、日本人技術者の〝技術〟によってでき上ったのである。そしてこの都市計画(タウン・プラン)班は、二十五年六月二十五日に勃発した朝鮮動乱のさいも、情報準備が全く出来ていなかった朝鮮について、徹夜仕事で基礎作業をやられたのであった。そして元山上陸作戦のはじまる三日前に、同じようなタウン・プラン・マップができ上ったのだった。

最後にもう一つ付け加えるならば、さきほど、読者の注意を呼んでおいたように、市ヶ谷の司令部は三枚看板であるということだ。

その最も重要な看板は「極東軍」である。極東軍ということは、日本を防衛する目的の軍隊ではなく、米国の安全と防衛のための、中共、ソ連への対抗兵力である、ということだ。

そして、この事実は元の参謀本部陸地測量部、現在の建設省千葉地理調査所で、正確な日本

地図を作らせて、タウン・プラン・マップと同様の地図を作ったことがあった(と私は思う)ということで裏付されるだろう。日本もまた、シベリヤ、樺太、大陸の各都市と同じように、「ST四三二一、消滅!」といった工合に、精確無比な爆撃を受ける可能性があるということである。