■□■「小渕基金」などと舞上がるな!■□■第18回■□■ 平成11年(1999)7月6日
7月6日付の産経紙朝刊に、「100億円の小渕基金、中国の緑化を推進」という、大きな記事がでた。9日に予定されている中国の江沢民主席との会談で、それを申し出るというものだ。「基金を使って多数の日本の青少年を中国に派遣、ボランティアで植林事業に協力する」方式も検討されている、と。
資金援助規模も酸性雨対策などを目的に、竹下登元首相の主導で開設された「日中友好環境保全センター」(約105億円)に匹敵するものとしたい考えだ(外務省筋)という。記事の結びは、「小渕基金」は中国への政府開発援助(ODA)とは、事実上別枠となるだけに、論議を呼びそうだ、とあった。
この記事を読んで、私はすぐ思い出した小さな記事があった。3日付の産経、東京両紙にだけ出た、小さな記事である。病床の竹下元首相が小渕総理に電話してきて、中国へ行ったら、「中国の台湾交渉の窓口である、海峡両岸関係協会の汪道涵会長と会談せよ」というアドバイスをした、というものだ。「竹下氏はしっかりとした口調で話をしていたという」(東京紙)そうだが、どうしてこれだけの話を、ジカに電話するのか、私は納得がゆかないのである。ナニを企んでいるのか?
その数日後に前記の「小渕基金」の記事である。竹下といえば、話は古くなるが、北京に日中ナントカセンターというハコものを建て、それを身内(娘の嫁ぎ先)の竹中工務店に受注させた、という事実がある。国民の税金である有償・無償援助を中国に出し、それもほとんどがゼネコンが儲かるハコものを作る。大義名分さえ立てれば、金は使い放題で、当然の結果としてリベートもこよう。
日常の新聞紙上に、やれ警官の汚職だ、自衛官の収賄だと、社会的腐敗の記事はあとを絶たないが、国をダシにした大きな腐敗は、決して“摘発”されない。
いま、「新潮45」誌に、岩瀬達哉がドキュメント・竹下登を連載中である。7月号では暴力団が一国の総理を作った、といわれている「皇民党事件(注)の深層」が掲載されているが、なかなかの面白さである。(注)ホメ殺しという流行語も出た、皇民党が街宣車を連ねて、「金作りのうまい竹下さんを総理にしよう」と、ホメまわった事件。
たまたま、岩瀬氏に会った。「竹下のODAの使い方の問題を、ぜひ調べてみてよ。北京に行って、ビルの実情を調べ、竹中以外の業者に値踏みさせれば、リベートも浮かんでくるよ」と、私は彼にすすめた。
ナベプロの女社長が、音楽著作権協会ビルの新築を進めた。清水建設の工費が高すぎると、他の理事から抗議が出てモメたことがあった。そのビルを他の業者に見積もらせたら数十億円高い、という。その話を聞いた私は女社長の自宅を調べた。15億円といわれる豪邸には、担保ひとつついていなかった。施工は協会ビルと同じ清水建設だった。ハコものは、調べると疑惑がつかめるのである。
もう、日本のODAも見直しの時期にきている。と同時に、首相や大臣たちが、外国に出かけては、「いくらいくら上げます」と大盤振る舞いをするのも、やめにすべきだ。日本国の赤字は、600兆円だというのに、どうして、この帳尻を合わせるのか。少子化、高齢化の21世紀に、この借金を支払うのは読者の皆さんである。 平成11年(1999)7月6日