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雑誌『キング』p.116上・中段/p.117下段 幻兵団の全貌

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 上段・中段 写真・日の丸引揚
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 上・中段 写真・日の丸引揚
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.117 下段 写真・赤旗引揚
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.117 下段 写真・赤旗引揚

写真p.116上・中段、p.117下段

[写真キャプション 引揚二態——(上)日の丸に迎えられた引揚者、(左)赤旗一色の引揚風景(いずれも上野にて)]

雑誌『キング』p.116下段 幻兵団の全貌 スラリと高い美人

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 下段

いつものように建築作業場で働いている時のことでした。気候のよいころで、その日は午後だと思います。作業隊についている警戒兵が、私の名を呼ぶので行ってみますと、やせて背のスラリと高い、足の美しい二十七、八歳の婦人が待っていました。理知的な、珍しいほどの美人でした。私はその婦人に一緒に来るようにといわれて、作業場を出かけましたが、もちろん日本語を話します。その言葉がまた歯切れは良いし、上品なのです。

婦人はマーシャと名乗り、モスクワの東洋大学で日本語を習ったそうです。卒業論文は勧進帳とかいうことでした。ともかく、町外れへ向かって、さっそうと歩いてゆくその婦人と同行してゆく私の気持ちを察してください。マーシャは快活にしゃべりました。彼女の語調、態度、すべての点で、私に捕虜だと思わせるようなことがなかったので、私も汚い顔や、みじめな身なりも忘れてしまったのです。おたがいに、東京とモスクワの学生生活なども話し合いました。何処へ、何をしに行くのか、そんなことなど考える暇もありませんでした。それこそ天にも昇るようなたのしさだったのです。長い間、男ばかりの荒んだ捕虜生活の中で忘れさせられていた、女性への思慕がよみがえり、乾ききった日割れに、ジューッと音をたてて水がしみこんで行く

雑誌『キング』p.116中段 幻兵団の全貌 C氏の場合

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 中段 写真・日の丸引揚
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 中段 写真・日の丸引揚

でいるような男もいた。私は反動で、ナホトカでは毎日のように吊るしあげられていたが、誓約書のこともすぐに皆にしゃべってしまった。

三、C氏の場合(談話)

C氏(特に名を秘す、三十歳、元軍曹、大学卒、会社員、東京都、バルナウル地区より二十三年に復員)

雑誌『キング』p.116上段 幻兵団の全貌 進んでスパイに

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 上段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.116 上段

と同じような奴がよく分かり、二千名中七、八十名はいたようだった。目立たぬようにするため、本部、炊事、理髪、うまやなどの勤務者がスパイにえらばれ、呼び出しは毎月末で、他の連中は毎回五〇—七〇ルーブルほどもらっていたらしい。憲兵などの前職者で、自己保身のため進んでスパイになり、使われるだけ使われて、結局は、同胞を売ったあげくに、自分も帰れない