最後の事件記者 p.294-奥付 あとがき(つづき)~奥付

最後の事件記者 p.294-奥付 昭和33年12月30日発行 著者・三田和夫 発行者・増田義彦 発行所・株式会社実業之日本社 東京都中央区銀座西1の3 印刷・佐藤印刷所
最後の事件記者 p.294-奥付 昭和33年12月30日発行 著者・三田和夫 発行者・増田義彦 発行所・株式会社実業之日本社 東京都中央区銀座西1の3 印刷・佐藤印刷所

もっとも興味をひかれているのは、昭電疑獄以来の、大きな汚職事件の真相を、えぐってみたい、ということだ。政治生命を奪われた政治家や、財界人の立場から、事件をみると、また興味津々だろうと思う。ことに、私が司法記者クラブで、直接タッチした、売春、立松、千葉銀の三大事件で、権力エゴイズムをひきだしてみたいと思う。売春汚職のため落選した元代

議士の一人は、早くも一審で無罪が確定してしまったではないか。立松事件だって、政党、検察、新聞という三つの力が、マンジトモエに入り乱れるところが、何ともいえない面白さだ。

と、こんな工合で、どうやらメシだけは、今のところは食べていられる。それでも、月のうち半分は徹夜して、安い原稿料にも、感謝の念を忘れず、せっせと働らかねば、子供たちを学校へやることもできない。ただもう眠たい時などは、つくづくサラリーマンがうらやましい。御心配を頂いた皆さんに、この場をかりて、厚く御礼申上げる次第である。

同時に、ここまで、私を成長させて下さったのは、読売新聞社をはじめとして、各新聞社の諸先輩方、同僚諸君のおかげであると、深く感謝いたさねばならない。今後ともの、御指導を併せてお願い申上げる。

この本で、今、気になるのは、文中お名前を拝借した方々の、敬称の不統一である。書きあげるそばから、工場へ行ってしまったので、手落ちがあると思

い、お詫び申しあげておかねばならない。

いわば、特ダネを追って十五年、とでもいったような内容なので、文中、大そう口はばったいところもあるが、大体がアクの強い男なので御寬恕を乞いたい。もちろん、私一人が事件記者だなどと思い上っておらず、読売をはじめ、各社にも、優秀で、敵ながら天晴れと、秘かに尊敬している記者が多いことは事実である。記者諸兄、お怒りなきように。

当然、最後の項に、横井事件を入れるべきであったのだが、文春に詳しく書いたので割愛した。なお、文春所載の「事件記者と犯罪の間」は、臼井吉見氏編の「現代教養全集、第五巻、マス・コミの世界」(筑摩書房)に収録されたので、御参考までにお知らせしておく。まだまだ、いろいろな事件についての面白い話があったのだが、時間と紙数の関係で、これも割愛せざるを得なかった。稿を改めて書きたいと思っている。

昭和三十三年十二月十五日

著 者

最後の事件記者
定価220円
昭和33年12月30日発行
著 者 三田和夫
発行者 増田義彦
発行所 株式会社 実業之日本社 東京都中央区銀座西1の3
電話京橋(56)5121~5
振替口座 東京326
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