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雑誌『キング』p.104上段 幻兵団の全貌 シベリア収容所分布図
シベリア捕虜収容所分布略図
コムソモリスク、ハバロフスク、ライチハ、アルチョム、ナホトカ、ウラジオ、ウォロシロフ、チタ、タイセット、イルクーツク、チェレムホーボ、ビイスク、バルナウル、ロフソスカ、アルマアタ、カラカンダ、ベゴワード、エラブカ、カザン、モスクワ
雑誌『キング』p.104下段 幻兵団の全貌 関係記事一覧
△1・21 〝幻兵団〟第四報(談話)
1・22 参院引揚委員長ら言明
1・22 捕虜のスパイ事実(青森版)
1・27 〝幻兵団〟参院議題に
△1・28 〝幻兵団〟第五報(舞鶴座談会)
△1・28 参院で法務府は調査中
△1・29 秋田で引揚者自殺
1・30 編集手帖欄
2・1 〝幻兵団〟に関係、参院で自殺者の説明
△2・10 阿部検事正遺族の怒り
△2・14 永田判事も犠牲
毎日
△1・31 シベリア幽囚白書(夕刊)
△2・1 かくて帰国は遅れた、闇に光る密告の眼
2・2 宇野氏の反ばく
2・3 同胞を食った(夕刊)
アカハタ
△1・14 反ソの幻ふりまく読売
実在せぬ談話の主
1・22 娯楽欄
△1・27 〝幻兵団〟のデマをつく
1・28 〝幻兵団〟参院報告あてはずれ
△2・2 反ソデマをつく内山氏
△2・3 売名と金儲けから〝幻兵団〟の
雑誌『キング』p.104中段 幻兵団の全貌 関係記事掲載紙
データを赤裸々に公表して、鉄のカーテンの奥の奥でさらにまた幻のヴェールにかくされた、〝幻兵団〟の全貌を、健全なる常識の持ち主である読者に解説してみよう。
[註] 都下各紙の〝幻兵団〟関係記事掲載紙日付一覧(いずれも都内版。地方版は同日付または翌日付)
読売
△1・11 〝幻兵団〟第一報(談話、解説)
△1・13 〝幻兵団〟第二報(談話)
△1・18 〝幻兵団〟第三報(脅迫状)
1・18 スパイを拒んだ男(岩手版)
1・19 投書〝幻兵団〟(気流欄)
1・20 小針氏へ激励状殺到(福島版)
雑誌『キング』p.104 幻兵団の全貌 収容所分布図 掲載紙
雑誌『キング』p.103上段 幻兵団の全貌 写真・参院在外同胞特別委
(写真キャプション 高砂丸引揚者、参議院在外同胞特別委員会で状況証言。立てる向って右より有田浩吉、尾上正男、高橋善雄、内山明、板垣正、長命稔、種村佐孝の各氏。左端後向きは岡元委員長。)
雑誌『キング』p.103下段 幻兵団の全貌 アカハタの反ばく
府特別審査局などの関係当局の政府委員を、参議院引揚特別委員会によび、説明を求めるにいたった。
これらの動きに対し、日本共産党機関紙『アカハタ』は、八回ほども連続して大きな紙面をさき、〝ブル新(ブルジョア新聞の略)の反ソデマ〟と反ばくした。こうして読売新聞がスクープした『ソ連抑留日本人のソ連スパイ組織』の問題は、国会にまで持ち込まれる重大問題化するとともに、商業新聞対機関紙の論争をまき起こしたのだった。
問題の焦点は、『ソ連に抑留された日本人が、ソ連の利益のために、在ソ間及び日本帰還後に、諜報行為を働く組織』が有るか、無いか、であって、〝幻兵団〟の有無ではない。読売新聞は、〝幻兵団〟というジャーナリスティックな呼び方をしているが、これはいわゆる〝幻兵団〟であって、〝幻兵団〟と名付けられた組織はないのである。
果たしてそれでは『ソ連スパイ網』があるかどうか。
私はここに『有り』と断言し、アカハタ紙の反ばくぶりを笑うものである。
私は読売新聞社会部記者として、二年半にわたる長期間の調査に、忍耐と努力とを傾けて、この恐るべき事実を握った。今ここに、一切の
雑誌『キング』p.103中段 幻兵団の全貌 毎日新聞もまた
は、事実無根のことをあれほどデカデカと書けるものではないし、しかも〝幻兵団〟員だったという幾人かの人が、住所、氏名、年齢、経歴、職業などを明らかにして、その事実を語っているし、国会速記録などにいたるまで、幾つかの具体的データを掲げているからには、そんなこともあるのかもしれないといった程度の肯定が行われていたようである。
だが、紙面では数日おきに、次々と具体的事実を示して、熱心にその真実性を主張し、回を追って信ぴょう性を高めていった。やがて毎日新聞もまた〝ベゴワード白書〟なるテーマで、読売の〝幻兵団〟の記事を裏書きする、ベゴワード地区のスパイ事実を大きく報道した。国会もまたこれを重視して、国警本部、法務
雑誌『キング』p.103 幻兵団の全貌 はしがき 写真
雑誌『キング』p.102下段 幻兵団の全貌 はしがき
られない、ということ。その二は、報道された内容があまりにもドラマティックなので、もしそのような組織や事実が実在するとすれば、スパイの任命には厳選に厳選を重ねられ、秘密保持のためにより以上慎重な考慮が払われるのが当然であるから、新聞記者などにかぎつけられるはずがあり得ないし、ソ連としてはあんな馬鹿なやり方をするはずがない、ということである。
また一方では、読売新聞が一流紙である以上
雑誌『キング』p.102上・中段 幻兵団の全貌 はしがき
はしがき
昭和二十五年一月十一日付の読売新聞は『シベリアで魂を売った幻兵団』という大きな横見出しのもとに全面をうずめて、ソ連地区抑留日本人の組織するソ連スパイ網の事実をスクープした。
拳銃、誓約書、合言葉、日本語の美人、賞金。あまりにも道具立ての整いすぎた、探偵小説そのままのようなこの記事に対して、読者の多くはスリラー的な興味を覚えながらも、やはり半信半疑の感があったに違いない。
なぜかといえば、次のような疑問が湧き起こってくるのが当然であろう。その一は、すでに戦争を放棄して自由と平和の国として立ち直りつつある現在の日本に、血なまぐさい国際スパイ団的な秘密組織があり、しかもそれには多数の日本人が参加しておって、もはや〝冷たい戦争〟以上の事実が展開されているということは信じ