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新宿慕情 p.010-011 新宿慕情・目次 事件記者と犯罪の間・目次

新宿慕情 p.010-011 新宿慕情 目次 事件記者と犯罪の間 目次
新宿慕情 p.010-011 新宿慕情 目次 事件記者と犯罪の間 目次

新宿慕情目次

はしがき
新宿慕情
洋食屋の美人
〝新宿女給〟の発生源
ロマンの原点二丁目
〝遊冶郎〟のエチケット
トップレス・ショー
要町通りかいわい
ブロイラー対〝箱娘〟
〝のれん〟の味
ふりの客相手に
誇り高きコック
味噌汁とお新香
新聞記者とコーヒー
お洒落と女と
おかまずしの盛況
大音楽家の〝交〟響曲
〝禁色〟のうた
えらばれた女が……
オカマにも三種類
狂い咲く〈性春〉
青春の日のダリア

事件記者と犯罪の間

その名は悪徳記者
特ダネこそいのち
権力への抵抗
根っからの社会部記者

新宿慕情 p.028-029 青線区域に遊歩道 新宿遊郭は二丁目

〈青線区域〉というのは旧遊郭の〈赤線〉に対する言葉で、三十二年ごろの売春防止法施行と同時に消えた。
新宿慕情 p.028-029 〈青線区域〉というのは旧遊郭の〈赤線〉に対する言葉で、三十二年ごろの売春防止法施行と同時に消えた。

二十代の美青年にタンノーしたのか、「おひるをご馳走するから……」というサービスを、固

辞して私は出ていった。

その笑顔から察するに、多分私は、肌を合わせたに違いなかった——今に至るまでも、私が経験した〈最高年齢〉記録を、この新宿のリンタクが打ち樹ててくれたのだった。

ロマンの原点二丁目

むかしの青線に遊歩道

いまの靖国通り、新宿アド・ホックビルの真向かいから明治通りの新田裏(なんと古い地名であろうか。東京屈指の盛り場である新宿に、こんな〝新田〟=しんでん=裏という名前が残っているのだ)にいたる間、まるで武蔵野を想わせる散歩道が数百メートルもある。

これは、東大久保から抜弁天経由で飯田橋にいたる旧都電の線路跡(軌道敷)だ。

新宿の表通りから都電が消え、次いで、このルートも消えた。新田裏から抜弁天にいたる間は裏通りを走っていたので、一方通行の道路となったが、両側の家は、みな背中をさらけ出すハメになったが、それなりに改造されて、それほどの醜さは表われていない。

こちらは、しもた家だからまだ良い。しかし、この散歩道に変貌した部分は、両側とも飲食店

しかも、片側はいわゆる青線区域だったから、なんとも汚らしい。

相当な経費をかけたのだろうが、この跡地を払い下げたりせずに、樹をたくさん植えこんで、両側の汚い部分に目隠しをして散歩道にしたのは、グッド・アイデアであった。

雨の降る日など、石ダタミの水たまりに映える、傘の女性の姿などは、夜のわい雑さを忘れさせる風情がある。

この〈青線区域〉というのは旧遊廓の〈赤線〉に対する言葉で、警察の取り締まり上から、赤青の色鉛筆で、地図にしるしをつけたことから出た、といわれている。

三十二年ごろの、売春防止法施行と同時に消えた、それこそオールドファンには懐かしい言葉である。

某月某夜、作家の川内康範氏を囲んで、数人で飲んでいた時、談たまたま、むかしの新宿遊廓に及んだ。いわゆる二丁目、である。

「むかしの新宿、といえば、二丁目にステキな子がいてネ……」

出版社の社長であるS氏が、身体を乗り出して、ホステスたちの顔を見まわしながら、話しはじめた。

大正二ケタたちは

「シヅエという、沖縄出身の、髪の毛の長い妓でネ。これがまた、〝名器〟でして……。心根と

いい、いまだに忘れられない。だから、私は、シヅエという名の女と、髪の毛の長い娘が大好きでしてネ」