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雑誌『キング』p.104中段 幻兵団の全貌 関係記事掲載紙

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.104 中段 幻兵団関係記事一覧
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.104 中段 幻兵団関係記事一覧

データを赤裸々に公表して、鉄のカーテンの奥の奥でさらにまた幻のヴェールにかくされた、〝幻兵団〟の全貌を、健全なる常識の持ち主である読者に解説してみよう。

[註] 都下各紙の〝幻兵団〟関係記事掲載紙日付一覧(いずれも都内版。地方版は同日付または翌日付)

読売

△1・11 〝幻兵団〟第一報(談話、解説)
△1・13 〝幻兵団〟第二報(談話)
△1・18 〝幻兵団〟第三報(脅迫状)
 1・18 スパイを拒んだ男(岩手版)
 1・19 投書〝幻兵団〟(気流欄)
 1・20 小針氏へ激励状殺到(福島版)

雑誌『キング』p.104 幻兵団の全貌 収容所分布図 掲載紙

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.104 シベリア捕虜収容所地図 幻兵団関係記事一覧
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.104 シベリア捕虜収容所地図 幻兵団関係記事一覧

雑誌『キング』p.103上段 幻兵団の全貌 写真・参院在外同胞特別委

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 上段  写真・参議院在外同胞特別委員会
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 上段  写真・参議院在外同胞特別委員会

(写真キャプション 高砂丸引揚者、参議院在外同胞特別委員会で状況証言。立てる向って右より有田浩吉、尾上正男、高橋善雄、内山明、板垣正、長命稔、種村佐孝の各氏。左端後向きは岡元委員長。)

雑誌『キング』p.103下段 幻兵団の全貌 アカハタの反ばく

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 下段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 下段

府特別審査局などの関係当局の政府委員を、参議院引揚特別委員会によび、説明を求めるにいたった。

これらの動きに対し、日本共産党機関紙『アカハタ』は、八回ほども連続して大きな紙面をさき、〝ブル新(ブルジョア新聞の略)の反ソデマ〟と反ばくした。こうして読売新聞がスクープした『ソ連抑留日本人のソ連スパイ組織』の問題は、国会にまで持ち込まれる重大問題化するとともに、商業新聞対機関紙の論争をまき起こしたのだった。

問題の焦点は、『ソ連に抑留された日本人が、ソ連の利益のために、在ソ間及び日本帰還後に、諜報行為を働く組織』が有るか、無いか、であって、〝幻兵団〟の有無ではない。読売新聞は、〝幻兵団〟というジャーナリスティックな呼び方をしているが、これはいわゆる〝幻兵団〟であって、〝幻兵団〟と名付けられた組織はないのである。

果たしてそれでは『ソ連スパイ網』があるかどうか。

私はここに『有り』と断言し、アカハタ紙の反ばくぶりを笑うものである。

私は読売新聞社会部記者として、二年半にわたる長期間の調査に、忍耐と努力とを傾けて、この恐るべき事実を握った。今ここに、一切の

雑誌『キング』p.103中段 幻兵団の全貌 毎日新聞もまた

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 中段
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.103 中段

は、事実無根のことをあれほどデカデカと書けるものではないし、しかも〝幻兵団〟員だったという幾人かの人が、住所、氏名、年齢、経歴、職業などを明らかにして、その事実を語っているし、国会速記録などにいたるまで、幾つかの具体的データを掲げているからには、そんなこともあるのかもしれないといった程度の肯定が行われていたようである。

だが、紙面では数日おきに、次々と具体的事実を示して、熱心にその真実性を主張し、回を追って信ぴょう性を高めていった。やがて毎日新聞もまた〝ベゴワード白書〟なるテーマで、読売の〝幻兵団〟の記事を裏書きする、ベゴワード地区のスパイ事実を大きく報道した。国会もまたこれを重視して、国警本部、法務

雑誌『キング』p.102下段 幻兵団の全貌 はしがき

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 下段 はしがき
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 下段 はしがき

られない、ということ。その二は、報道された内容があまりにもドラマティックなので、もしそのような組織や事実が実在するとすれば、スパイの任命には厳選に厳選を重ねられ、秘密保持のためにより以上慎重な考慮が払われるのが当然であるから、新聞記者などにかぎつけられるはずがあり得ないし、ソ連としてはあんな馬鹿なやり方をするはずがない、ということである。

また一方では、読売新聞が一流紙である以上

雑誌『キング』p.102上・中段 幻兵団の全貌 はしがき

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 上段・中段 はしがき
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 上段・中段 はしがき

はしがき

昭和二十五年一月十一日付の読売新聞は『シベリアで魂を売った幻兵団』という大きな横見出しのもとに全面をうずめて、ソ連地区抑留日本人の組織するソ連スパイ網の事実をスクープした。

拳銃、誓約書、合言葉、日本語の美人、賞金。あまりにも道具立ての整いすぎた、探偵小説そのままのようなこの記事に対して、読者の多くはスリラー的な興味を覚えながらも、やはり半信半疑の感があったに違いない。

なぜかといえば、次のような疑問が湧き起こってくるのが当然であろう。その一は、すでに戦争を放棄して自由と平和の国として立ち直りつつある現在の日本に、血なまぐさい国際スパイ団的な秘密組織があり、しかもそれには多数の日本人が参加しておって、もはや〝冷たい戦争〟以上の事実が展開されているということは信じ

雑誌『キング』p.102 「戦慄!! 幻兵団の全貌」 前文

雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 タイトル 筆者名 前文
雑誌『キング』昭和25年5月号 p.102 タイトル 筆者名 前文

見えざる影が狙ってる!
戦慄!! 幻兵団の全貌
讀賣新聞記者 三田和夫

私は新聞記者として、二年半にわたる長期間の調査に、忍耐と努力とを傾けて、この恐るべき事実を握った。今ここに、一切のデータをあげ、鐵のカーテンの奥の奥にかくされた〝幻兵団〟の全貌を赤裸々に公表して、平和な文化国家建設を阻むものの野望粉砕に資したい。

雑誌『キング』昭和25年5月号 目次 幻兵団の全貌

雑誌『キング』昭和25年5月号 目次 見えざる影が狙ってる! 幻兵団の全貌 三田一夫 一〇二 ※「三田一夫」となっているが、本文中は「三田和夫」なので、単純な誤植であろう。「三田一夫」の筆名も正論新聞など他ではよく使用している。
雑誌『キング』昭和25年5月号 目次 見えざる影が狙ってる! 幻兵団の全貌 三田一夫 一〇二 ※「三田一夫」となっているが、本文中は「三田和夫」なので、単純な誤植であろう。「三田一夫」の筆名も正論新聞など他ではよく使用している。

雑誌『キング』p.24下段 シベリア抑留実記 むすび

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 下段 むすび (22・12・10記)
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 下段 むすび (22・12・10記)

生産を抹殺している現政権の下に、人類の平和と幸福のシンボルという赤旗を掲げながら…

しかし四十九種族から成り立つソ連人には、民族的な偏見がいささかも見られなかった。私達はソ軍将兵からは対捕虜的な言動を受けたことはあったが、一般人からはほとんどそんなことは感ぜられなかった。彼等は本当に心やすく付き合ってくれた。年寄りなどが作業場の付近を通りかかる時、煙草をくれたりすることもあったが、憐れみの情を示す施しではなく、本当に素朴な親しみをこめてくれた。忘れることのできないロシア農民の純真な姿である。

むすび

船にのった時、復員官が「現在の復員船の能力をもってすれば在ソ同胞の復員は三カ月で完了します」と話したが、なるほど船はずいぶん空いていた。十二月という真冬になって残った人達は来春の帰還を夢みては、「お母さん」と呼びながらあの寒さと必死になって闘っている。なぜソ連はさっさと還さないのだろうか。この調子でいったなら来年一杯でも終わらない。遅くなればなるほど犠牲の出ることは明らかなのだ。来年の夏までに全部が復員できるように、皆の小さな力を結び合わせて大きな力にしよう。(二二・一二・一〇記)

昭和22年12月10日記

雑誌『キング』p.24中段 シベリア抑留実記 ソ連国民生活の実情

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 中段
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 中段

えミシンを買い、高い程度の生活をしているのに、片方では「教育の権利」すら放棄して食うことに追われている。だから子供達は学校へ行かず、二十二、三歳の学校出が技師と呼ばれて別世界の人間のように尊敬されている。第一炭坑と呼ばれるこの町の大炭坑で大きな食堂とその門前のバザールとが坑夫逹の最大の設備だ。児童劇場とか図書館とか休息の家といった文化福利施設は探し得なかった。

ソ連の言葉に「八時間労働、八時間睡眠、八時間オーチェレジ(買物行列)」という言葉があるが、この、オーチェレジはイバーチ(性の遊戯)と訂正されねばならない。食物を得るために酷使された肉体は動物的な本能を露呈するだけである。わずかに与えられた歌と踊りの慰安は、これに拍車をかけて性道徳の倫乱は徹底している。

住民たちは何も知らないでただ生きている。たのしい生活を、人間らしい生活を希求するまでに彼等の知識は開かれていない。こうして愚昧な労農大衆はレーニンの像を立てスターリンの絵を飾りH・K・V・D(秘密警察)の冷たい銃口を背に五カ年計画へ追いまくられている。スターリン・プリカザール(スターリンの命令だ)の一言で一切が解決されるところの「言論の自由」を与えられ、戦後三年にいたるも民需

雑誌『キング』p.24上段 シベリア抑留実記 ソ連国民生活の実情

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 上段
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.24 上段

驚きの連続だった。停車ごとに何かを手に入れようとする人達が、男も女も年寄りも子供も押しひしめいた。こうして軍の被服は街にはんらんした。どんな布でも、署名に汚れた日の丸の旗さえ夢中になって求めた。一体今まで何を着ていたのだろうと考えるほど、被服類は払底していた。

「働かざるものは食うべからず」は「食うためには働かざるべからず」であった。労働の種類に応じ配給されるパンは、学童妊婦などの特殊なものを除いて、働かないものには全くなかったから、女も子供も働きに出てパンを稼ぐ。一家中で獲得したパンを浮かしてバザールで売り、生活を立ててゆくのだ。食うためには働きに出なければならない。ここから彼等の勤労観は出発する。働く歓びはおろか、ただ食うために働くのだから、固定作業のものは八時間の経過を待ちこがれ、歩合作業のものは労力を最少限に惜しむ。憲法によって享有されている「労働の権利」は「労働の義務」となって重たくのしかかっていた。

富める者は、妻は家庭に、子供は学校へやり、必要量のパンをバザールで買う。そのパンこそ貧しいものが一家総出で得たパンを割愛して売るパンである。「人間による人間の搾取のない国」で、一方は肥え太って美服をまとい、ラジオを備

雑誌『キング』p.23下段 シベリア抑留実記 シベリアで考えたこと

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 下段 シベリアで考えたこと ソ連国民生活の実情
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 下段 シベリアで考えたこと ソ連国民生活の実情

傷したり、不慮の死を招いたりする。

優遇されたのは特技者であった。腕に職のある人——工員、理髪、大工、左官、仕立屋、靴屋などは、低いソ連技術者が相手なので皆自分の本業で楽に働いていた。

シベリアで考えたこと

ソ側思想係将校が各中隊へ壁新聞を作れといってきた。私が中隊の編集者にきめられたので、皆が筆者であり、皆が興味を持てなければと考え、「ものは付」を募集した。あのシベリアで中隊の皆は何を考えていただろうか。

一、「逢いたいものは」は、九割くらいがお母さんと呼び、わずかに妻子、父、兄妹だった。

二、「食べたいものは」は、一位から十位までが、餅類、お赤飯。餅も甘い餅で、量があって腹ごたえがあるからだったろう。

三、「したいものは」は、温泉とか釣りとかゆっくりした休養を求めていたが、親孝行も上位の方だった。

四、「みたいものは」は、故郷の山河、その後の内地、肉親の顔など、毎日毎日考えていたことばかりであった。

ソ連国民生活の実情

私達の列車がシベリアに入ってからの情景は、

雑誌『キング』p.23中段 シベリア抑留実記 労働の程度

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 中段
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 中段

が、衣食住の悪条件とあいまって一番苦しいらしい。

「働かざるものは食うべからず」の鉄則は私達にも厳しく適用された。すべてのことにノルマ(標準)があって、一つ一つのどんな細かい仕事にもその作業標準がある。たとえばこの切羽からは一人一日(八時間)八トンの石炭とか、枕木を五十メートル以内運搬するのは何本とかときまっている。そしてそのノルマを遂行しなければ残業である。あるいは指揮官にその責任を問うて処罰する。処罰は営倉があり、食事を制限して苦役に使用された。さらに重いのに拘禁所があり、十二時間の重労働が課せられた。

患者は作業に出なくてよいのだが、神経痛とか形にあらわれない病気の者などは、ソ連軍医が患者として扱ってくれないし、また作業場で腹痛とか急病人が出てもソ連人の監督がいてオチオチ休ませてやれない。だから無理をする。そのためにすっかり体をこわしたり、負

雑誌『キング』p.23上段 シベリア抑留実記 労働の程度 

雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 上段 労働の程度
雑誌『キング』昭和23年2月号 p.23 上段 労働の程度

たけれど砂糖が定量十五グラムとして給與された。しかし栄養失調やら衰弱死などで分かる通り、決して充分なものではなかったが、ソ連としては精一杯の優遇をしたとみることができる。しかし脂肪分の少ないのと、調味料が岩塩だけだったこと、および野菜がなかったのが苦しかった。

病棟炊事は一般の炊事よりはるかに質的によい糧秣を受領し、主食は米をほとんど切らさなかったが、薄い粥であり、すべて量が少ないのが患者の頭痛の種であったろう。

イラスト(バザール風景)

労働の程度

在ソ同胞の作業は、炭坑、森林伐採、鉄道工事、道路建設、建築、港湾、さらに特技者の工場等重要産業、すなわち新五カ年計画遂行へ全面的に参加させられている。中でも森林伐採など