第2章 米対外援助資金への疑惑
昭和四十年。〔三月九日ニューヨーク発AP〕米司法省は九日、米国東棉社ニューヨーク本社を含むニューヨークの貿易会社二社を詐欺罪で告発した。告発の理由は、米対外援助による南ベトナム、韓国向け資材について、米政府に偽りの申告をしたというもの。
「戦果はベトコン一人」
中古機械が新品に
さる四十年六月に行なわれた、アメリカの戦略爆撃部隊の、ベトコン根拠地への渡洋爆撃は、「戦果はベトコン一人」の珍ニュースとして全世界に流れた。ワシントン発のUPI電によると、この爆撃行の経費は、途中空中接触して墜落したB52二機の損害九百八十万ドルを含めて燃料費、人件費、爆弾の製造費など、総計二千万ドル(七十二億円)という。そして、ベトコン一人が殺された次第である。
このような計算は、アメリカならではの出来事であるが、ことほどさように、「戦争は高くつく」のである。高くつく戦争に比べれば安いというので、北鮮から在日北鮮系の団体である朝鮮総連に流されてくる資金は月額二十億円といわれている。この豊富な資金で、在日朝鮮人の教育、文化、政治工作が賄なわれ、一説によると、南鮮を占領すると同時に、総連の下にある各府県連が、そのまま南鮮各地の行政組織として、即日進駐できるよう、訓練されているとさえ、伝えられているのである。
このような時点で、韓国に対するアメリカの対外援助(AID=国際開発局)資金をめぐって、日本商社の関係した問題が相次いで明らかになってきた。問題そのものは、アメリカのタックス・ペイヤー(納税者)に関するものではあるが、それが「対外援助」であり、韓国に関するものである限り、日本商社が関係しているのであるから、ここに問題点を指摘してみよう。
一九六四年のDAC(開発援助委)加盟国の行った経済協力実績の総額は、約八十六億余ドル。このうち、アメリカは五六・二%を占めており、その莫大な対外援助資金が果してその本来の目的意義に、正しく投ぜられているかどうか。被援助国もしくは、米本国に於てすらも〝利権〟化されているのではなかろうかという、疑問を抱かせるニュースである。
前記のAP電は伝える。
「米国東棉と同社の二口機械部長(当時)は六三年十一月、韓国向け機械二十一品目を新品と申告して輸出し、米政府は三十六万四千八百ドル(一億三千百三十二万八千円)を支払ったが実際に機械は新品でなかった。また、ユナイテッド・スチール・アンドワイヤー社のグリーン社長は、南ベトナム向け鋼線七万ドル以上の、三分の一を積出しただけで、五万五千ドルを着服した。
もし有罪となれば、二口氏は最高懲役百五年、米国東棉は罰金二十一万ドル(七百五十六万
円)の判決を受ける可能性がある」