ちソ連のもつ暗さである——と闘う覚悟を決め、それからそれへと引揚者をたずねて歩いた。その数は二百名を越えるであろうか。
このようにして、緩慢ながら奇怪な一種の組織の輪郭が浮かんできたのである。それによると、
一、この組織は二十二年を中心として、シベリア各収容所において要員が選抜され、一人一人が誓約書を書かされて結成されたこと。
二、これらの組織の一員に加えられたものには、少なくとも四階級ぐらいあること。
三、階級は信頼の度と使命の内容で分けられているらしいこと。
四、使命遂行の義務が、シベリア抑留間にあるものと、内地帰還後にあるものとの二種に分かれ、両方兼ねているものもあると思われること。
五、こうした運命の人が、少なくとも内地に数千名から万を数えるほどいるらしいこと。
などの状況が判断されるにいたった。
これらの状況を、もっと具体的に理解してもらうためには、あつめられた次の五例をみることが、一番手っ取り早いに違いない。まずA氏の場合を、その告白文によってみよう。
一、A氏の場合(手記)